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 ハサミを持って突っ走る/オーガステン・バロウズ

『ハサミを持って突っ走る』/オーガステン・バロウズ (著), 青野 聡
単行本: 305 p ; サイズ(cm): 20
出版社: バジリコ ; ISBN: 4901784560 ; (2004/12)
内容説明
ぼくたちは見えないものを追いかけて走っている−。アル中の父と精神病の母に放り出され、患者のような精神科医の奇妙な家で過ごした痛ましくも可笑しい少年時代。


タイトルに興味を惹かれて、図書館で借りたのだが、とにかく変な話だった。正常とは思えない所での、正常とは思えない人たちの話である。そうなると、「まとも」って何?みたいな感じになってきて、その正常とは思えない人たちの正常とは思えない行動が、普通に正常じゃないかと思えてくるから怖い。

これは、バロウズの13歳から18歳までの、なんだっけ?ええと、まあとにかく自伝的な話ってことで、カバー裏の写真を見てしまうと、「こいつが13歳であんなことをしちゃって、こうなっちゃったの?」みたいな感じで、なんだか気持ちが悪くなってもくるのだが、 ものすごくおまけをして 良い方にとれば、デビッド・セダリスの 『すっぱだか』 のようでもある。

セダリスは大好きなので、他人に「バロウズはセダリス(の作風)に似ている」などと言われたら、たぶん怒ってしまうだろうけど、自分で言う分にはいい。それに、本心からそう思っているわけでもないし。あえて言えばセダリスっぽいけれど、根本的には違うと思っている。なんたって、セダリスは正常とは思えない人の部類ではない。

でも、主人公が飄々としているところや、バロウズのユーモア感覚などは、たしかにセダリスに共通しているかもしれない。しかしこの小説は、猥雑だ。幸か不幸か、主人公が(バロウズがと言ってしまってもいいかもしれないが)あれやこれや経験した年齢を考えると、エログロな部分がかなりどぎつい。セダリスは読み終えるのがもったいない感じがしたが、この本は、何度か途中でやめたくなったりもした。セダリスのほうがはるかに上品であることは間違いない。

かといって、この本が面白くないというわけではなく、バロウズのユーモア感覚はなかなか好きだし、全体としては面白かったのだが、笑って読みすごすことのできなかった猥雑さが、どこか悲しい気分にもさせる。

ともあれ、ストレスがたまってくると、私もハサミでも持って突っ走りたくなってくる。要注意!

2005年08月20日(土)
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