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 白の鳥と黒の鳥/いしいしんじ

『白の鳥と黒の鳥』/いしい しんじ (著)
単行本: 205 p ; サイズ(cm): 20
出版社: 角川書店 ; ISBN: 4048735748 ; (2005/02)
出版社 / 著者からの内容紹介
なつかしくて斬新で暖かい。極上の短篇小説集を読む喜び。物語の曲芸師いしいしんじが一篇一篇、魅惑的に語り進める、短篇小説の楽しさがぎゅっと詰まった珠玉の一冊です。


いしいしんじの本を1冊読み終えた。日本文学の中で、無理矢理どこかに位置づけるとしたら、やっぱり宮沢賢治系だろうなとは思うが、かといって、今日読み終えた本の感じでは、一概に同じイメージでは括れないとも思う。そりゃ個人的には、どうしたって賢治のほうが上と思うし。

でも、この人はこの人で面白い。想像力が豊かであるという点では、賢治にもひけをとらないと思うし、他の作家(日本の作家はあまり読んでいないのでわからないが)とはひと味もふた味も違うだろうと思う。

しかし、賢治との比較はあまりしないほうがいいとも思う(私が勝手に比較しているだけだが)。たしかに賢治に似ているところもあるとは思うが、決定的に違う部分がある。賢治は男女の性については一言も触れていないのだが、いしいしんじのほうは、さりげなく、あるいは場合によってはあからさまに描いている。そこが、賢治の作品よりも人間くささを感じる所以だろう。

また作品によっては(今日読了したのは短編集だ)、現代的なユーモアも混じっているし、さらに、物事の捉え方が正直でもある。カラスが「クラゲ、クラゲ」と鳴いたなんていうのは、たとえ本当にそう聞こえたとしても、私のような凡人は、まさかカラスが「クラゲ、クラゲ」とは鳴かないはずだと、空耳と思い込もうとするだけだが、いしいしんじは、それをそのまま書いてしまうというところがすごい。

果たして、本当にカラスが「クラゲ、クラゲ」と鳴いているように聞こえたのかどうかはわからない。カラスが「クラゲ」と鳴いたら面白いだろうと思って書いただけかもしれない。それでも、そうした発想がユニークである。

賢治はあくまでも賢治でしかないのだが、いしいしんじは、賢治のようでもあり、アンデルセンやグリムといったおとぎ話やほら話の要素もあり、またアーヴィングやオースターといった現代外国文学の要素も持ち合わせている。しかし、イタロ・カルヴィーノほどにはぶっ飛んでいないのが、ちょっと残念。

2005年08月05日(金)
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