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■ ルーカス(BOOK PLUS)/ケヴィン・ブルックス
『ルーカス』 BOOK PLUS/ケヴィン・ブルックス著・林香織訳 単行本: 358 p ; サイズ(cm): 19 出版社: 角川書店 ; ISBN: 4048970445 ; (2004/12) [内容紹介] イギリスの小さな島で繰り広げられる、少女と孤独な少年の運命的な出逢いと別れ。忘れられない青春時代の想い出がよみがえり心揺さぶられる、現代の癒しの物語。
コーマック・マッカーシーの『越境』と併読だったが、文学としては、やはり大きな差を感じる。比較するほうが気の毒とは思うが、たまたまそういう状況だったので、仕方がない。
マッカーシーの描く主人公の淡々とした「孤高さ」に比べると、『ルーカス』の感情たっぷり、思い入れたっぷりの自分勝手な主人公には辟易する。こういう主人公を見ると、もう少し落ち着いて、静かにしてくれと思う。よくあるドタバタな小説ではないけれど、精神的に落ち着きのない少女だなと思う。
この主人公、あれはいけないとか、誰は間違っているとか、気の毒だとか、言うことは立派なのだが、行動が伴わず、結局は何もできない。挙句の果てには、突拍子もないことをして、周囲に迷惑をかける。まだ子どもだから仕方がないとも思えない。だったら、静かにしてなさいと。でも、こういう人間ているんだよねとも思う。
主人公が出会う不思議な少年ルーカスは、どこかカール・ハイアセンの『HOOT』に出てくる少年を思い起こさせ、この静かな、だが決然とした少年の存在が、作品を救ったとも言えるだろう。悲しい結末は予想外だったが、この少年には大きな魅力があった。この少年によって、主人公の少女も救われる。
人間の社会に、いつの世も存在する邪悪さゆえ、この結末以外にはありえないという絶望とともに、ある意味でルーカスもまた「孤高」であり、群れた愚かな人間の犠牲になったのだと悲しく思った。この汚れた社会では、「孤高」という言葉は、もはや存在すら危うい。
清く、正しく、美しくとは、社会に迎合せず、孤独でなければできないことなのかもしれない。
2005年01月12日(水)
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