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■ ダルタニャン物語(1)友を選ばば三銃士/アレクサンドル・デュマ
解説 時は十七世紀、フランスはルイ十三世の御世であった。スペイン国境近いガスコーニュ地方から、一人の若者が宮廷での立身出世を夢見て、ドンキホーテのロシナンテ顔負けのしょぼくれ馬にまたがって、パリの都をめざす。快活、勇敢で、それでいて抜け目ないガスコーニュ人の気質を典型的に備えた十八歳のダルタニャンその人である。パリ政界は、枢機官リシュリューと銃士隊長トレヴィルが覇を競う。ひょんなことからトレヴィル隊長に付き従うアトス、ポルトス、アラミスの三銃士とダルタニャンは生涯の友情を誓うこととなる。しかし、悪化する英仏関係の中でアンヌ王妃が陥れられた陥穽からの脱出を、王妃の侍女ボナシュー夫人が恋人ダルタニャンの懇願する。ダルタニャンと三銃士は王妃を救うべく立ち上がリ、ドーバー海峡を渡らんとする。
『モンテ=クリスト伯』のようなドラマチックな展開を期待して読み始めたが、ダルタニャンが田舎から出てきて、三銃士のいる銃士隊に入れて欲しいと頼むまでが長い。そういえば、デュマの小説は、出だしはスピードのあるものではないかも。
それにしても、この時代のフランス人て、なんて喧嘩っぱやいのだろう。それも、たいしたことでもないのに、すぐに剣を抜く。サー・ウォルター・スコットが、『アイヴァンホー』で「フランス人は野蛮だ」と書いていたが、なるほどと納得。血気盛んなダルタニャンに、ついていけないという感じだ。
また、この時代のフランス人の常なのだろうか、人の妻などということには一向にとらわれずに恋愛をするダルタニャンなどは(ダルタニャンに限らずだが)、単なる恋愛感情だけでなく、相手を利用して出世しようという意図が丸見え。個人的には、「ダルタニャン、お前もか!」という感じ。本を読む前には、ダルタニャンは高潔な英雄かと思っていたが、どうして気の多い浮気性な男だったというわけだ。その最たる人物がポルトスというわけだが、ポルトスはいざ知らず、ダルタニャンにはがっかりだった。そういう意味では、私は女には見向きもしないアトスびいき。
しかし後半すぎて、デュマの筆も乗っていたのだろうか、いくらかテンポも良くなり、ダルタニャンもウィットに富んだ会話などもするようになり、田舎出の何も知らない青年も、だんだん大人になってきたかという感じ。
ともあれ、ダルタニャンと三銃士、主人公格の登場人物が4人いるわけだから、デュマも忙しい。それぞれ同じくらいの割で筆をさくわけだから、これじゃ話もなかなか進まないというものだ。この先続いて、第二巻もこの調子では退屈だが、いよいよ悪者が登場するので、話もドラマチックになるだろうと期待する。
●三銃士の性格
<アトス>:まだ三十そこそこの青年で、身体つきといい、気立てといい、稀に見る立派な人物だったが、いまだかつて浮いた噂を立てられたことがない。女の話など、絶対に口にせぬ男であった。
<ポルトス>:アトスとは全然反対の気性だった。口数が多いばかりでなく、声高にまくし立てた。相手が聞こうと聞くまいと、いっこう平気でいるところがこの男の身上だった。しゃべるのが楽しみでしゃべり、自分の声に聞きほれてしゃべるのである。学問以外の話ならなんにでも口を出した。
<アラミス>:年のころは二十か二十三くらい、無邪気なあどけない顔つき、黒いやさしい目を持っており、バラ色の頬には秋の桃みたいに、かわいらしいうぶ毛が生えている。ほっそりした口ひげが、上唇の上できれいに刈り込んである。ふだんは口数も少なく、ゆっくりしゃべるたちで、腰も低く、笑うときには美しい歯を見せて静かに笑う。
2004年04月06日(火)
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