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 文学刑事サーズデイ・ネクスト(1)─ジェイン・エアを探せ!/ジャスパー・フォード

内容(「MARC」データベースより)
1985年のイングランド。原本のページをめくり、消えたヒロインを追う文学刑事サーズデイ。凶悪な連続古典破壊犯ヘイディーズ。文学史上最大の捜査が始まった! 英米ベストセラーシリーズ第一弾。

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イギリス文学の名作の数々と、恋愛やアクションなどのエンターテイメント性とを見事に融合させた、知的でかつシュールな冒険活劇小説だ。舞台は1985年のイギリス。しかし、そこはわれわれの知っているイギリスとはだいぶ異なった世界である。クリミア戦争は131年目に突入しており、ジェット機は存在しないのに、クローンのペットが大流行している。そして国民最大の娯楽は、サッカーではなく文学。そのため日常生活では文学にからんだ事件が後を絶たない。主人公サーズデイは、それらの事件を取り扱う特別捜査機関(スペックオプス)に所属する「文学刑事」である。

彼女は、天才科学者の伯父が発明した、文学作品の中に侵入できる特殊装置「文の門」を巡って、悪の化身アシュロンと巨大軍事企業ゴライアス社と、三つ巴の死闘を繰り広げる。その戦いはなんと現実の壁を超えて、イギリス文学不朽の名作『ジェイン・エア』のなかにまで展開するという破天荒ぶりを見せる。著者はもともと映画畑の人間だったというが、映像世界に培われた感性が、従来の小説にとらわれない発想を手助けしたのだろう。

突拍子もない出来事と、意表を突くアイデアのオンパレードは、本書でも取り上げられている『不思議の国のアリス』もかくやと思わせる。そんな作者の「奇想」一つひとつに驚かされているうちに、読者はいつの間にか、息をもつかせぬパワフルでスピーディーな物語へと巻き込まれている自分を発見するに違いない。(文月 達)

※2作目『Lost in a Good Book』(2002)
※3作目『The Well of Lost Plots』(2003)



これはかなり面白い。ちなみにこの作品は、次のように評されている。

"James Bond Meets Harry Potter in the Twilight Zone."
"part Bridget Jones, part Nancy Drew and part Dirty Harry"

ジェイムズ・ボンドっぽくもないし、ハリー・ポッター的でもないのだけれど、全く違うキャラがトワイライト・ゾーンという、わけの分からない異次元で出会ったという例えは、言い得て妙だと思う。ダーティ・ハリーは頷けないが、たしかに主人公のサーズデイは、BJ的。

刑事が主人公なのでミステリかと思うと、予想を裏切って、かなりSFっぽい。ユーモアがいかにもイギリス的で、言葉遊びの感覚などは、ハリー・ポッターにも通じる。イギリス的ユーモアが鼻につかなければ、文学好きにはたまらない本かも。

子どもたちが遊んでいるトレーディング・カードが、ヘンリー・フィールディングの『トム・ジョウンズ』の登場人物だったりして、なるほど、登場人物が200人以上もいる小説だから、トレーディング・カードに向いてるかも。(^^;

「ソフィアをアミーリアと換えてやる」
「ふざけんな!」もうひとりが憤慨した。「ソフィアが欲しけりゃ、アミーリアだけじゃなくて、オールワージーとトム・ジョーンズもつけなくちゃだめだ!」
相手はソフィアがレア物であることを知っていて、しぶしぶ同意した。

と、こんな具合だ。子どものくせに、結構マニアック!

あらすじは、だいたい上に書いてあるようなことだが、最初、悪の化身アシュロンは、ディケンズの『マーティン・チャズルウィット』の手書き原稿を盗み出し、中からクウェイヴァリーという人物を連れ出して殺してしまうのだが、次に『ジェイン・エア』の中に自ら入っていく。

実はリテラテック(文学刑事)であるサーズデイは、子どもの頃から『ジェイン・エア』の中に入り込んでいた経験があり、ヒーローのロチェスターとも顔なじみだというから驚きだ。そのサーズデイも、アシュロンを追って『ジェイン・エア』の中に入る。

そこで、彼らが取った行動は、『ジェイン・エア』の中身を変えることとなり、結末までも変わってしまった。ブロンテ協会の怒りも、一般の「この結末のほうがいい」という多数意見には負けて、結局認められることとなるのだが、サーズデイ本人の恋愛もまた、『ジェイン・エア』の結末と同じ結果になる。

というわけで、『ジェイン・エア』については、有名な古典の名作だから、ほとんどの人が読んでいるという前提のもとに書かれているのだろう。残り4分の1ほどのところで、サーズデイが『ジェイン・エア』のあらすじを全部しゃべってしまう。私はまだ読んでいなかったのに・・・。この本を読まれる方は、ぜひとも先に『ジェイン・エア』を読んでおくべきだ。

とはいえ、それを知ったからといって、『ジェイン・エア』の中身が全部わかるわけでもないし、いまだに結局どんな話なのかわかっていないのだから、あらすじを全部しゃべられたからといって、特に害はないようだ。先に読んでいて納得するのは、結末が変わってしまったことの大変さくらいだろうか。

それよりも、私はディケンズの『マーティン・チャズルウィット』のクウェイヴァリーなる人物を本の中から探そうとしたのだが、見当たらなかった(探し足りなかったのかもしれないが)。本当に殺されてしまったのか?なーんてことも思ったりして、どこまでが本当にかかれていることで、どこからがフォードの創作なのか不明だということのほうが気になって、『ジェイン・エア』のネタバレなど、どうってことのないことである。しかし、実際に『ジェイン・エア』の結末はどうなっているのか、早急に確認してみたくなった。

ところで、この話は一体いつごろの話なんだろうか?飛行機でなく飛行船が飛んでいるし、かと思えばクローン技術が非常に発達している。クロノガード(時間警備隊)などというのもあって、タイムトラベルも行われている。だがクロノガードの大佐のジョークから、どうやら1985年であるということがわかるのだが、だからといって、この荒唐無稽な話の中では、何の役にも立たない。

サーズデイのおじであるマイクロフトが作ったブックワーム(本の虫)というのがいるのだが、これが文章の上を這い回って、いろいろと分析するのだけれど、エサは前置詞、ふんはアポストロフィーと&だというのには、笑えた。

けれども、シリアスなのかと思うとナンセンスだったりして、そういうところが非常にイギリスっぽくて、単純に笑えるところもあるのだが、イギリス的なユーモアが、逆に鼻に付く部分がなきにしもあらず。1冊読み終えると、もうお腹がいっぱいという感じだ。「ミスター・ビーン」を観て、大笑いしているのだが、時々ちょっとそれはやりすぎじゃないの?と思って気持ちが悪くなるといった感覚と一緒かも。

2004年04月04日(日)
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