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 透明人間/H.G.ウェルズ

内容(「MARC」データベースより)
雪どけの始まった、冬の終わり。その風変わりな男はアイピング村にあらわれた。実験道具とおぼしき荷物を大量に運び込み、いつも顔は包帯でぐるぐる巻き。謎の男は、やがて忽然と消えてしまい…。


「透明人間」って悪い人ではないのだろうと思っていたら、世界を恐怖で支配しようという恐ろしい野望を持った悪者だった。しかし透明人間になる前の彼は、そもそも色素の薄い体質であり、人と違う容姿を持つことで幼い頃から孤独であり、そこに端を発して透明になる研究を始め、ついには恐ろしい野望を持つに至ったと推測される。包帯を巻いてサングラスをした姿は異様で他人から敵視されるが、そうなる前からすでに彼は他人から差別を受けていたのだ。結局孤独なら、それを逆利用して人々を自分の意にそわせようという哀しさが見える。

ウェルズの物語は映画などでも見ているし、SFといえばウェルズというくらいに有名なので、今更読むまでもないというくらいではあるが、読んでみると、ただの怪物ものではなかったのだと気づく。透明になれたら何でも好きなことができていいだろうと思うが、透明であるがゆえの不都合は、なるほどそこまでは考えなかったなという点がたくさんあって、思わず苦笑してしまう。

周囲の登場人物がなんとなくディケンズの小説のような雰囲気で、やはりイギリスが舞台であるからということを非常に意識したが、同じSFというジャンルとはいえ、たしかにフランスのジュール・ヴェルヌ(1826-1905)とは違った雰囲気があった。

ウェルズ(1866-1946)のほうが40歳ほど年下だが、SFの先駆者的存在としてヴェルヌと並び称され、今日のSFの原型を作り上げたという意味では、ウェルズを開祖とする考え方もある。




2003年09月25日(木)
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