泥の川
まあるい月の ひかりの中の 泥の川
ゴオゴオと流れて いらないものを はこんでゆく。
*
きのう 友だちと 自分が死んだあとに みられたら困るものの話をしたので
10代の頃から ため込んでいる日記帳を すててしまおうと おもいたった。
きょうは 満月で きりがいいし。
「日記」とマジックでかいてある 段ボールがふたつ。
押し入れから出して あけてみると 1992年から書き始めた 何冊ものハードカバーの日記帳が。
昔はまめに かいたものだ。
ついつい 開いて読んでしまう。
今よりも丁寧な 昔の自分の筆跡。
10代の頃 20代の頃 自分の書いた言葉。
その頃まわりにいた人たちの言動。 わたしの言動。
出会いと別れ
そのときどきの 心の動き 妄想 おもいつき。
よくおぼえていること すっかりわすれていたこと 変わらない自分の性質。
気がついたら 数時間時間がたっていて
その頃の自分と はなしができたような 気になって
やっぱり すてられない
まだ死ねない
とおもって
また 段ボールは 蓋を閉じて おしいれの中へ いれた。
*
これまで いろいろな人に出会って 好きになったり 悲しくなったり 支えられたり ぶつかったり 大切にしたり 忘れたり 忘れられたり ただ一緒にいたり
そんな 大きなつながりの網の中で
ひとはみんな ひとりぼっちの ひとりぼっちーずなんだ。
そうやって ひとりのわたしが ひとりのみんなと つながりあいながら 人生が動いてゆく
まさに いまも その真っ最中で
いまは次々と 消えて新しいいまが やってきて
それが いつまでつづくのかは わからないけれど
それはそれは 貴重なものなのだと おもった。
いまは いましかなくて すべてカンペキな ものなんだと。
不完全だと 感じるものも
それは わたしの考えが そうおもっているだけで 実はすべて カンペキなんだと。
そんなことを おもって
だけど 結局 なんにも すてられなくて。
まあ あとは 流れに まかせておきましょう。
満月の夜ですから。
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