晴れたり 曇ったり
めぐみ



 いつだってスタート地点に立てる

朝7時。
予定より5時間も早い起床。
今日のめぐには午前中なんてないはずだった。

祖父の痛み止めはもう効力を失っている。
だんだん強い薬になって身体はさらにボロボロになるに違いない。

また病院の付き添い。
診療開始時間前に集まる患者達。
今日も一時間は待たされること間違いなしの様だ。

目の前に辛そうに座る男の子。
小さい頃の弟に似ていて、
「早く診察してもらえるといいな」と願った。

隣に杖をついた女性が座った。
右手も、言葉を発することも不自由そうだった。

男の子の母はいらいらしていた。
まだ呼ばれないのか?とやきもきしている様子。

女性は言った。
「今日は少ない方ですよ」
「この間なんて・・・」と続き、
珍しく、病院でわたしは口をきいた。
その女性とはスポンジに水が吸い込むようすぅと会話ができたのだ。
不思議な感覚。

彼女はうちの母くらいのおばさんで7年前に脳内出血で倒れた。
それ以来、言葉が思うように出て来ない。
ゆっくりゆっくりと言葉を探すように話す。
倒れて一年間は、話せなかったと言う。
その間、字を書いて会話してきたのだろう、
手が口より先に宙に文字を書く。
漢字がすらすらと綴られる。
彼女はひらがな、カタカナを忘れてしまった。
でもノートには、『レントゲン』の文字。
覚え直し、そのうえ利き手じゃなかった左を使いこなすまでに至る。

「子供の手が離れ、これからって時に倒れたの」
「スキーもゴルフもテニスもしたわ」
「でも、今じゃ、それもパー。。。」

そう話す彼女の顔にはちっとも影がなかった。

「今はね、絵を描いているのよ」
「今度、前橋で個展するから観に来て!」

どうしようもない状況、辛い状況下にいながら
彼女は笑っていた。とても明るく。眩しいほどに。

何でもできる!その気になれば。
いつだってスタート地点に立てるんだ。
そう、彼女はわたしに伝えてくれた気がする。




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2002年03月13日(水)
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