晴れたり 曇ったり
めぐみ



 彼と会っていただけ。悪い事なんてしてないわ。

今日は朝から母の仕事の手伝い。
どれも今日中にしなくてはならないことだらけ。
腹に何も入れず銀行やら郵便局、市役所と回っている間に
時計はおやつの時間、3時になっていた。

遅い昼食を済ませるとチビとチビパパが遊びに来た。
---チビママ(いずみ姉さん)は今日お出かけなのだ。
「めぐちゃ〜ん♪」
相変わらず可愛い声で登場。
10個ほど風船を膨らませてやると
「キャー」
と奇声をあげその中に埋もれてはしゃいでいた。

と、そこへ一通のメール。
『いまどこ?』
フリータイムが出来たと知らせるそのメールに動揺した。
いつも突然なんだ。そしていつも私は出かけられない様な状況にいる。

外国の友人。
彼と会うのは何ヶ月ぶりだろう?
仕事で来日する彼は常に
『ISOGASII.GOMENNE...』ばかり。
「いいよ」としか返せない私。
そろそろ日本を離れるのを知っていた私は会いたかった。
チビが「あしょぼ」とミニカー片手に私の手を引くが
心は一瞬どこかへ行っていた。
「どうしよう?今逃すと会えないかもしれない」
そればっかりだった。チビごめん。。。

とある事情で、彼と会うのは家族もいずみ姉さんもいい顔をしない。
---外国人だからと言う理由ではないことだけは書いておく---
だけど彼とは話したいことがいっぱいだったんだ。
だから、チビが「またね」と帰ると同時に私は家を飛び出した。
「手紙出して来る」と。
これは、嘘ではなかった。ただ、会うことは話さなかっただけ。
母が仕事から戻って来るまでに
家に居れば問題ないとこの時、思ったのだが・・・

彼も夜から仕事があるらしく、私達に与えられた時間は1時間ちょっと。
いつもの母の帰宅時間には充分間に合う計算だ。
駅で待ち合わせた私はとんでもないことに気付いた。
今日、母の用事を済ませる間に財布が空になっていたのだ。
すっかり忘れていた。
「どこ行く?」と聞く彼に
「ごめん。お金忘れた」と答える日本人。
逆パターンはよく聞く話。ああ、ドジね。
いくら彼が稼ぎに来ているとはいえ、タカルのはどうかと思う。
日本に住んでるんだから海外から来た人には
(たまには)おごってあげるくらい太っ腹じゃないと・・・
と思うのが私の考え。「ごめんね」ばっかりで頭が埋まる。
調度お互い空腹ではなかった為、
「僕がおごるよ」と言うことでカフェへ行った。

そこは、地元(群馬)らしくない空間だった。
彼が好むのも分かる気がした。
「ここは高崎」
「ココハタカサキ」
「ここはたかさき」
ローマ字で"TAKASAKI"と表現しても「たかさき」らしくなかった。
彼が隣にいたからだけじゃなく、
どこか違った街に迷い込んだ感じがしたんだ。

「お久しぶりです」とどこからか声がする。彼の友人(日本人)らしい。
「こっちで一緒にどう?」と誘われるままにソファーに。
彼とは向かい合って座る。間にテーブル。距離がある。
しかも、その席では失礼なことに日本語で盛り上がってしまって
彼とは結局ほとんど会話ができなかった。
彼とカフェで口をきいたのは、
英語がままならない彼の友人の友人(遠いなぁ)の通訳時のみ。
おしゃべりなおじさんだった。止まらない止まらない、言葉の羅列。
最後の方はくだらないことを通訳するのに嫌気がさした。

「じゃぁそろそろ」

時間だけが刻々と過ぎ去って、
「駅まで送ってくれる?」と別れた。
分かったのは彼の正確な旅立ちの日にちだけ:3月7日。もうすぐだ。
聞きたいことも知りたいことも何一つ得ず、別れた。

今日に限って母の帰りが1時間以上も早かった。
虫の知らせ?
「どこにいるのよ」
と拘束する声は急に私を罪悪感で一杯にした。
彼と会っていただけ。別に悪い事なんてしてないわ。

慌てて帰る。
「好きでしょ?彼の事」
相席した例のおじさんに言われた。
おじさんの笑い声が頭を回る。回る。回る。

雨が降り出した。



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2002年02月26日(火)
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