紫
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花嫁の父は、式が始まる前から泣いていました。
控え室では、沖縄からきた親族による三線と踊りの練習。
きのう、緑の表紙の本をたくしたギターさんは、リハーサルに現れず、なかなか会場にも来ずに冷や冷や。
10分前にやっと到着したあと、友の人前(じんぜん)での結婚式が執り行われました。
彼女の友、いえ、ホントなら義理の姉になるはずだった友が、きょうの結婚の立会人です。
人の前に出るのをひどくいやがる友なのに、きょうは一生懸命にがんばっていました。
こみあげる思いは感謝なのか祝福なのか。
涙をこらえるのが必死で、そんななか新婦とその父が入場してきました。
喉の奥が熱くなるのを感じながら、涙がこぼれ落ちるのを耐えた理由は、私に課されたひとつの義務のために過ぎません。。
私たちの「妹」にあたたかいあたたかい、あたたかすぎるメッセージをくれた人たちに、彼女の幸せな姿を知らせる義務があるんです。
彼女の笑顔と、立会人の友と、新郎新婦の両親。
私たちが知っている「共通の悲しみ」に思い馳せることができる仲間たち。
フラワーリースを作るために、新郎新婦がみんなのところをまわっていきます。
みんな、お祝いの言葉を伝えている様子。
私は胸がいっぱいで涙をこらえるのが必死で、それでもこれだけは夫になる彼に伝えたくて。
「絶対に、幸せに、してやってくださいよ(泣かせたら、ただじゃおかないよ)」
脅迫めいた物言いが、私の精一杯の言葉でした。
サラリーマンの家庭に育った彼。
お嫁さんに小姑よりうるさい「きょうだい」がたくさんいることに、いつしか慣れていくのでしょうか。
人前式のあいだ、微動だにしない花嫁の父。
ときどき、うしろを向いて涙を拭う立会人である義理の姉の姿。
そして、友の笑顔。
あぁ、私はこの場にいられてよかった。
その後、二次会にも出席させてもらい、幸せのシャワーを一身に浴びました。
ふと、花嫁の両親のことが気にかかり、急きょ、お宅訪問。
心配は及ばず、元気なふたりでした。
よかった。
人前式に出たいって、お願いしてよかった。
二次会にも出席してよかった。
何もかもがよかった。
だって、きょうはこんなに幸せな気もちなんだもん。
ホントにホントに、おめでとう。
おめでとう。
おめでとう。
何度もいうけど、おめでとう……!
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