紫
|MAIL
目次|過去の日記|未来の日記
「ほら、咲いてるよ。早くしないと」
母が父に何かを急(せ)かしました。
「そうか」
父がいそいそとベランダに出て行きました。
いったいベランダに何があるのでしょう。
「スイカの花が咲いているの」
花だけでなく家庭菜園も得意な母は、ベランダでなんでも育てています。
きぬさややキュウリ、トマト、わらび、ネギ、サニーレタス、ほうれん草、白菜……。
今はスイカの花がベランダで天下を取っている様子。
それにしてもいったい父は何をしに行ったのでしょう。
「スイカの実がきちんとなるように、お祈りしにいったんよ」
「えっ?!」
いつからこんな習慣ができたのか、母はどうしてこうも平然というのか。
そして、父が私と同じことをしていることに、驚きを隠せませんでした。
そっとベランダを覗き込むと、父がこちらに背中を向けて、なにやら花を覗き込んでいる様子。
私と「お祈り」の仕方は違うけれど、きっとこんなことを話しかけているのでしょう。
「ちゃんと大きくなるんだよ。ちゃんと実を結ぶんだよ」
忘れかけていた「親子」を感じて、なんとなくうれしくなった今日の朝のできごとでした。
目次|過去の日記|未来の日記