紫
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「あっという間に桜が咲いたね」
母が、窓の外を眺めながら言いました。
その言葉につられて、窓の外に目をやると、そこは春まっさかりでした。
「でも、この雨で散るね」
独り言のように続けざまにつぶやく母。
それでも、その言葉には寂しげな感じはなく、むしろ桜が咲いて散っていくという一つの春のイベントを楽しんでいるかのように聞こえました。
母は、私にいつも来(きた)る季節を感じさせてくれます。
それは、ほかの人からは感じたことのない季節です。
母の言葉で私に伝えられる季節は、ときどきとてもせつなく、そしてとてもたいせつなものに思います。
「でも、この雨で散るね」の言葉のなかに、母が何を感じていたのか。
いっしょに住んだ時間は短くとも、なんとなくわかるのは「親子」だからでしょうか。
「桜が咲いて、散っていく」という当たり前のイベントが、今日から私のなかで「特別なもの」になりました。
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