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2003年02月03日(月) 兄と私の「歴史」

「あ…」

昼ころに台所に行くと、テーブルの上に大きな大きな太巻き寿司がありました。

「あり合わせのもので巻いたよ」

母がちょっと誇らしげに言いました。
そう、今日は節分です。
節分の日に、『恵方』という方角を向いて長いままの太巻きを無言で食べ、厄払いと幸せを願う、というのは、大阪から始まった慣わしとのこと。
今では、東京や北海道のほうにも広がっていますが、「無言で食べる」ことは、あまり知られていないのではないでしょうか。

シイタケの嫌いな私は、子どものころからシイタケ抜きの太巻きを特別に巻いてもらっていました。
兄といっしょに、

「よーい、どん!」

と、恵方を向いて競争しながら、しかも無言でむしゃむしゃ食べるのは、笑い冗語の私には、とてもとてもつらいことでした。
いつも私より早く食べ終わる兄は、私をどうにかして笑わせようと、変な顔をしたり、うしろから呼んでみたりと、いろんなことをしてきます。
それでも、がんばって食べ終わって、お茶をゆっくり飲んで一息ついて、そうして一年の恒例行事を一つ終えます。

今年の恵方は、南南東(南微東)とのこと。
思えば、母の太巻きは15年以上食べていません。
一本、取ろうとすると、

「あんたのはこっち」

と、別にしてあった太巻きを渡されました。

「それ、シイタケ抜き」

懐かしすぎる気持ちになりながら、無言で太巻きをむしゃむしゃと食べました。
お茶を飲んで、一息ついて。

(お兄ちゃんも、この太巻きを食べるのかな)

と、なんとなく胸がきゅうっとなったことに母は気づいていないでしょう。
兄と私しか知らない「歴史」。
いつの日か懐かしく語り合う日がくればいいな。




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