紫
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21時ころ、電話がかかってきました。
父宛です。
いつも20時にはぐっすりと眠っている父にとっては、大迷惑な電話です。
「もしもーし、おうおう。え? 旅行?」
どうやら、旅の相談を父にしているようです。
どこかに出かけるのが好きなのは母のほうで、私が小学校に入ってから中学校を卒業するまでは、毎夏・毎正月には、2泊3日の家族旅行を企画していました。
いつも父は、ついでについてきていたような感じ。
そんな父に、旅の相談?
ついつい、聞き耳を立ててしまいます。
「八幡平か〜。昔、戦争があってな。たくさん人が死んだんだよ。おうおう。ソ連軍への攻撃に備えて訓練しとったんだ。そしたら、寒くて攻撃に行く前にたくさん死んでしもたんだ」
父の話に、私も思わずうなりました。
戦争の話が父の口から出るなんて。
「え? トロッコ? あ〜、あれは…」
「(富山)」と、こっそり母。
「そうそう、富山だ」
母の絶妙のタイミングに、父と母の歴史を感じました。
両親といっしょに住んでから、ときどきこういう光景を目にします。
もうこのふたりは、「阿吽(あうん)」の域に入っているんだろうな、と思います。
「山はいい、山はいいよ」
大工一本で、東北からどんどん南下してきた父は、京都で母と出会い、京都に落ち着いたと、幼いころに聞きました。
もし、京都で母と出会わなかったら?
「沖縄まで行っていたかもなあ」と笑いながら答えていたのを今でも覚えています。
そう、父は日本を縦断してきたのです。
私よりたぶんいろんなところを訪れているはず。
今度、久々に父とお酒を飲もうかな、と思えた電話でした。
旅人同士、みずいらず。
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