株式会社JOYWOW
椰子の実日記【JOYWOW】
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2003年05月03日(土)


自動的なセリフ

ニューヨーク時代からNHKの朝ドラが好きで、観ている。
マンハッタンの朝、エンパイア・ステートビルを窓の外に
借景しながら沖縄の海を見るのはなかなか
オツなものであった(『ちゅらさん』)。
現在の「こころ」、浅草の心意気がよく、楽しみに
しているのだが、主人公こころとそのダンナとの
二人の描写に厚みがなく、彼らだけの芝居になると
急激に品質が下がる。たとえば、芝居で大事な
「見染め」がない。どこでお互いに心を奪われたか、と
いう場面がなかったのだ。すると「結婚することが目的」
になってしまい、ついつい「アホちゃうか」と思う。

ゆうさく(ダンナ)がこころの親に「嫁に下さい」と
挨拶に行った際、「こころさんの夢を実現する手助けを
したい」と言うが、ではこころの夢って何なのかわから
ない。先のドラマのヒロイン満天のように「宇宙飛行士
になる」という夢がないのである。

今朝も、客室乗務員の仕事を辞めて家の仕事に専念しようか
というこころへ「そんな簡単にあきらめられる夢だったのか」
とゆうさくは言うけれど、そもそも夢が見えないんですけど、と、
つい画面につっこんでしまう。

どうもああいう場面(女性が仕事を辞めて家事に専念しようか
どうか迷う場面)で男が言う「自動的なセリフ」を言っている
だけのようだ。そしてこの「自動的なセリフ」というのは実は
日常会話でわれわれもよく使っている。

ベーゴマ、メンコ、などという遊び道具を指して「昔懐かしい」
という形容詞が必ずつく。しかし、私はベーゴマやメンコで遊んだ
世代ではない。懐かしくないのである。この自動的セリフは
注意しなければならない。仕事でも、よく使われているのでは
ないだろうか。「不況の昨今」「消費者マインドの冷え込み」
「多様化する価値観」「デフレスパイラル」

ロシア・フォルマリズムという文学理論の唱える「異化」の効用
が、ここにきてようやく理解できた。自動的なものいいに
対して、「ん? ちょっとザラつきがあるな」と、異化させる
のだ。必要だよね。

 

Kei Sakamoto |株式会社JOYWOW