普通の新妻の日常ってこんな感じよ?
琴乃



 先に消えようと思った。

現実から逃げるために、
大阪まで面接を受けに行った。

彼が。
私の目の前から、いなくなることに私は耐えられない。
そう思ったから。
先に消えようと思った。

大阪を、大阪営業所の近辺をウロウロして。
マンション探してた。
やっぱり、転職じゃなくて転勤したい、と
痛切に思う。
思い知らされた。
自分の本心に。

給料が良かったから面接受けに行った。
仕事内容とか、自分のため、とかじゃなくて
お金のため、彼の前から消えるため。
それだけだった。
それ以外、何もなかったし考えなかった。
惑わされたくないから。

でも。
自分が、お金のためだけに生きてきたなら
風俗辞めてなかったと思うし、
今の彼氏とも付き合ってなかった。
今の仕事が好きだな、って思い知らされもしたし。

いい勉強になったと思う。
面接受けに、大阪まで行ってよかった。
私は。
彼が消えていくのを、自分の目で眺め続ける、
彼と一緒にマンションの片付けをする、
彼が大阪へ行くのを見送る、
という、耐え難い行為を受け入れることを
選んだ。

泣くんなら、また、前みたいに
気が済むまで泣けばいいかなって思う。
どーせ、いずれは、泣き止む時も
来ると思うから。




だから。
転勤したいなら。
転職してる場合ではなくて。
それに、面接受けに行った会社の仕事内容が
私の希望には、全く合わなかった。
だから、即、辞退してしまった。
相手先には、申し訳ないことをしてしまった。


週末に。
彼と一緒にいた。
恐らく、来週が最後だ。

年明けからは、週末にいつものように彼の家に
行くことを辞めようと思う。
彼がいない週末に慣れる必要もあるだろから。

営業所は、昔の元の事務所に引越しが
決まって。
家賃経費がかからずに済む分、長生きも
出来るだろうと、彼はいい加減なことを言う。
でも、営業所が生き残れたとしても
私は、そんなに長いあいだ、
この会社にいるのだろうか?
自分でも分からない。

面接受けに行った時の質問事項。
「10年後には、どうしていますか?」
即答なんて、もちろん無理。
悩んで悩んで、出た回答は、我ながら
唖然とする回答で。
もっと、まともな答えを出せばいいのに。
そう思った。


だって、ここ2,3年、
3ヶ月あれば、ころころ状況が変わる。
そのスピードの速さに、自分でもついていけない
部分がでてきて。
だから、10年後なんて、想像つかない。
願わくば、結婚していたい、
誰かと一緒にいたい。
そう思う。




2006年12月18日(月)
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