こう、桃色か肌色の軟体なものがあって、 柔らかさは生卵の黄身の具合で 大きさは両の手の平に収まるくらいで 形は歪な半球体です。
それの所々に、何かが焦げ付いたような 硬く、瘡蓋のような褐色の部分があります。
そうしてその瘡蓋を、顕微鏡でよくよく調べながら 爪や、細かいものはピンセットやなんかで 剥ぎ取ってゆきたいんです。
何もしていない時や本を読んでいる時や寝る前に起こる、 厭な体験のフラッシュバックのようなその記憶 胞子を出したかのようにその軟体なものの中で増殖して 頭が一杯で狂しくなって、今にもヒスを起こしそうです。
だからそんな禍々しい記憶の瘡蓋を残らず、一片も残さずに けづり取って棄ててしまいたいんです。
たといその結果、何も残らなかったとしても構わないから 何も思い出せなくなってずうっと眠れれば良いな、と思います。
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