エンターテイメント日誌

2007年01月09日(火) 硫黄島二部作

クリント・イーストウッドの硫黄島二部作は非常に意欲的な作品である。その冒険心溢れる姿勢は高く評価したい。硫黄島の戦いを日米両サイドの視点で描くという試みは、<戦争に正義の側と悪の側など存在しない>という真実を浮き彫りにする。実はこのテーマは手塚治虫が漫画「アドルフに告ぐ」(1988年初版)で既に描いているのだが、映画ではこの硫黄島二部作が初めてだろう。

「父親たちの星条旗」の評価はB-。時制をパズルのように入れ替えたポール・ハギスによるトリッキーな脚本が素晴らしい。ただこの作品は戦意高揚のために捏造された英雄たちが、戦後社会復帰することの難しさを描いているわけだが、戦場から帰還した兵士たちのその後を描く映画としてはウイリアム・ワイラー監督の名作「我等の生涯の最良の年」(1946)が既にあるわけだし、テーマとしては何も目新しいものがなかった。

「硫黄島からの手紙」はそれぞれの登場人物たちが魅力的に描き分けられた戦争映画である。それ以上でも以下でもない普通に出来の良い作品なわけだが、これを日本語が全く分からないイーストウッドが撮ったことは賞賛に値する。どこから見ても正真正銘の日本映画にしか見えないところが凄い。よって評価はB+とする。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]