エンターテイメント日誌

2006年12月02日(土) Bond, James Bond

「007/カジノ・ロワイヤル」の評価はC。普通の映画として観ればそこそこ面白いが、これは007映画とは言えない。

6代目で初の金髪のジェームズ・ボンド、ダニエル・クレイグに対しては映画制作当初から批判が多かった。インターネットでは彼の起用に反対するウェブサイト、クレイグノットボンド・ドットコムが立ち上がったくらいである。

今回のボンドは従来の路線とは全く異なり、ワイルドな肉体派になっている。特に全裸で敵の(破廉恥な)拷問を受ける場面には驚愕した。全身傷だらけで無様に鼻血を流したりもする。今まではありえない場面だ。確かに新機軸ではある。しかし、観客がジェームズ・ボンドに対して抱いているイメージをことごとく破壊してそれで製作者は満足なのだろうか?

一言で言えば新しいボンドにはSMART(洗練された、利口な)という形容詞が欠けているのだ。筋肉はむきむきだけれどタキシードが似合わない。全然お洒落じゃない。また不用意に毒薬を飲まされたり、敵の仕掛けた罠に安易に引っ掛かってパスワードを喋ってしまったりする。つまりおつむが足りない。こんなのボンドじゃない。

脚本は見事である。なんと言っても「ミリオンダラー・ベイビー」でアカデミー脚本賞にノミネートされ「クラッシュ」でオスカーを受賞したポール・ハギスだから。同じく彼が手がけた「父親たちの星条旗」も時制をパズルのように組み替えた素晴らしい脚本だった。「カジノ・ロワイヤル」が007映画でなければ筆者はもっと評価した筈だ。

もう一人、今回是非褒めておきたいのは音楽のデヴィッド・アーノルド。まるで007シリーズの音楽を初代担当したジョン・バリー(「ゴールドフィンガー」「ロシアより愛をこめて」)が帰ってきたのかと錯覚するような惚れ惚れする出来だった。バリーのスタイルを咀嚼・踏襲しながら決して猿真似にならない絶妙なバランス感覚。天晴れである。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]