2005年09月15日(木) |
出来の良い似非ドキュメンタリー <ノロイ> |
映画「リング」シリーズ、「呪怨」シリーズ、「仄暗い水の底から」「感染」「予言」などを製作し、和製怪奇映画を世界的なブームにまで押し上げてきた一瀬隆重 プロデューサーの新作「ノロイ」を観た。一瀬プロデュース作品は「呪怨」の清水崇監督による「輪廻」も来年一月に公開を控えている。ちなみに「ノロイ」で重要な役回りを演じる松本まりかは「輪廻」にも出演している。
「ノロイ」の評価はB-。ドキュメンタリーを装ったなかなか創意工夫に満ちたフィクションである。
「ノロイ」の公式サイトはこちら。 「ノロイ」完成後、自宅が全焼しその焼け跡から妻が焼死体で発見され、本人は消息不明になったことになっている怪奇実話作家:小林雅文氏の公式ホームページはこちら。 小林雅文氏本人の了承を得て開設されたとされるファンサイトはこちら。
しかしながら、小林雅文なる人物が架空の存在であることは公式ページに列挙されている著書やビデオがAmazonなどで検索しても存在しないことからも明らかである。映画はしかし、観客にこの人物の実在を信じさせるためにスタッフやキャストのクレジットも全くなく突如として終わり、場内が明るくなるという仕掛けまで仕組んである。なかなか用意周到、創意工夫に満ちたホラ話に感心した。
ドキュメンタリー風のホラー映画と言えばあの手ぶれの画面が吐き気を催した映画未満の代物「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」の悪夢を想い出す。しかし「ノロイ」があれと一線を画するのはまず脚本がよく練られており、手持ちカメラではあるが計算された画面構成でプロのカメラマンが手堅く撮っている点である。禍具魂(かぐたば)が憑依した母と息子の設定や、唸り声などは明らかに「呪怨」の影響下にあり、プロットに今までの怪奇映画をよく研究した成果が伺われる。所詮アマチュアの映画ファンが撮ったに過ぎない「ブレア・ウィッチ」が根本的に駄目だったのは最後まで恐怖の対象を写さないことにあったのだが、「ノロイ」ではちゃんとそれを見せてくれる点も好感度大だった。
ただし、この映画の最大の欠陥はラストシーンにある。自分が殴り殺されかけ、さらに目の前で妻が灯油を被って焼身自殺をしようとしているのに、それでもカメラから手を離さず、対象を撮り続ける人間なんてこの世にいるだろうか?余りにもリアリティに欠け、白けてしまった。花も実もある絵空事ではあっても最後まで上手に騙して欲しかった。
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