エンターテイメント日誌

2005年04月23日(土) 心地よい予定調和<コーラス>

映画「コーラス」は端的に言うなら、<熱血教師もの>である。ある日学校に新任教師が現れる。初めは反発していた子供たちも、次第に先生の熱心な指導に共鳴し、見違えるように態度を改め、健やかに成長してゆく。「チップス先生さようなら」(1939)の時代から変わらぬ、いわばワン・パターンである。

実は先生は密かに作曲を続けており、それを子供たちに指導し演奏させるというパターンも、リチャード・ドレイファス主演の「陽のあたる教室」(1995)で既にあった。(余談だが、故マイケル・ケイメンが「陽のあたる教室」のために書いた音楽は良かったなぁ。彼の最高傑作だろう。)

しかし、先生の熱血指導ぶりが保守的な学校側の体制と激突し、最終的には学校を去らねばならない立場に追いやられ、生徒との涙の別れで映画が大いに盛り上がるというのもロビン・ウィリアムズ主演の「今を生きる」(1989)やドイツ映画「飛ぶ教室」(2003)などでお馴染みの手法である。

こうやって列挙してみると、このジャンルでは<寄宿舎>で<男子校>が多いという特徴も浮かび上がってくる。そしてその全てに「コーラス」は当てはまるのである。

だから「コーラス」に目新しい要素は皆無であり、観客の予想を裏切ることなく、物語は進行してゆく。しかしだからといってこの映画が退屈だと言うことは一切なく、その予定調和が実に心地よく幸福な気分に浸れるのだから実に不思議だ。筆者の評価はA-を進呈する。


まずなんと言ってもセザール賞の作曲賞・歌曲賞に輝き、米アカデミー賞でも歌曲賞にノミネートされた音楽が実に素晴らしい。子供たちの美しい歌声が耳に残る。

教師役のジェラール・ジュニョや子供たちの演技も印象的だった。悪役の校長先生など脇役も光る。これは必見。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]