エンターテイメント日誌

2005年02月15日(火) コール・ポーターとミュージカル映画

作曲家コール・ポーターで即座に想い出すのは、RKO映画「コンチネンタル」でアステアが唄い踊る<夜も昼も>のナンバーとか、「踊るニューヨーク」 (BROADWAY MELODY OF 1940)でアステアとエリノア・パウエルがタップで火花を散らす<ビギン・ザ・ビギン>、あるいはジュディ・ガーランドとジーン・ケリーが道化姿に扮装しての掛け合いが実に愉しい「踊る海賊」の "Be a Clown"や「上流社会」でのビング・クロスビーとフランク・シナトラの夢のデュエットなどである。これらは<夜も昼も>を除いて映画「ザッツ・エンターテイメント」シリーズに収録されている。DVDも先日発売されたので未見の方は是非ご覧戴きたい。ウットリと見惚れ、出るのは溜息ばかりである。

映画「五線譜のラブレター」はそんなコール・ポーターの伝記映画であり、妻リンダとの夫婦愛を主軸にミュージカル仕立てで描かれる。これが実に素晴らしい。映画の終盤はもう滂沱の涙である。評価は謹んでAを進呈する。映画「オペラ座の怪人」よりも格調高く、衣装など洗練されている。

ハリウッドの赤狩りを題材にした「真実の瞬間(とき)」(1991)なんて実に凡庸な出来だったけれど、今回は監督のアーウィン・ウィンクラーを見直した。巧みな編集で実に映画的でありながら、と同時に劇場への愛が全編に貫かれるという離れ業を成し遂げたのである。

ポーターを演じるケビン・クラインが実に良いし、「ミス・サイゴン」「マイ・フェア・レディ(再演)」など舞台ミュージカルでも大活躍のジョナサン・プライスが脇を固めるのも嬉しい。惜しむらくはジョナサンの唄をもっと聴きたかったなぁ。ただその分、ナタリー・コール、エルヴィス・コステロ、シェリル・クロウなど豪華ゲスト(←クリック)の唄が愉しめる。

実は本人が存命中だった1946年に、ワーナーで「夜も昼も」というポーターの半生を描いた映画が作られている。しかしこれはメロドラマ仕立ての駄作であった。今回の映画ではポーターが同性愛者だったことなど、「夜も昼も」で描かれなかった真実が白日の下に晒されているのだが、それが作品の品格を貶めることなく、偉大な作曲家に敬意を払った仕上がりになっていることに深い感銘を受けた。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]