2004年12月19日(日) |
日本三大ミステリー女王と映画 |
映画「レディ・ジョーカー」の評価はFである。兎に角、鄭義信の脚色が酷い。物語展開が支離滅裂で犯人グループのそれぞれの犯行動機とか、何でそんな行動を取るのかなど全く理解不能である。これは周囲の意見を聞いても同様なので筆者の理解力が不足している訳ではないだろう。映画が糞なのだ。鄭義信は「血と骨」の脚色が良かっただけに同じ人の仕事とは到底信じがたい。
高村薫の原作は99年版「このミステリーがすごい!」で堂々一位になった小説であり、想像するに映画とは全く別物なのではなかろうか?筆者は映画を観るまでは原作を読むまいと決めていたので、これから早速読んでみたいと想っている。
高村薫の「マークスの山」映画版(監督:崔洋一、脚本:丸山昇一、崔洋一)の出来が酷くて素晴らしい原作をぶち壊し、今回こそはと期待していただけに非常に残念である。つくづく高村さんは映画に関しては不運な人だ。
「21世紀の石原裕次郎を探せ!」オーディションでグランプリを獲得し、本作で主役に抜擢された徳重聡は大根役者で存在感がない。合田刑事役にしては線が細過ぎる。むしろ合田のイメージとしては「マークスの山」で合田を演じた故・古尾谷雅人の方が似合っていた。「レディ・ジョーカー」で唯一観る価値があるのはニヒルな刑事役を演じた吉川晃司である。良い役者になったなぁ。
日本三大ミステリー女王と言えば高村薫・宮部みゆき・桐野夏生であるということに異論をはさむ人は誰もいないだろう。
宮部みゆき原作でいえば森田芳光脚色・監督の「模倣犯」は「レディ・ジョーカー」並に悲惨な出来だったが(原作は素晴らしい)、金子修介が監督した「クロスファイア」はなかなか良かったし、なんたって矢田亜希子が可愛い。そして今を時めく長澤まさみ@セカチュウのデビュー作でもある。さらに、今月劇場公開される大林宣彦監督による「理由」は極めて原作に忠実な傑作である。
三大女王の中で比較的映像作品に恵まれているのは桐野夏生であろう。平山秀幸監督、鄭義信脚色という「レディ・ジョーカー」と同じコンビで映画化された「OUT」は後半原作と全く異なる展開をするが、それはそれでなかなか巧くまとめてあり面白かった。原作の精神というか志が映像に見事に置き換えられていたのである。直木賞を受賞した「柔らかい頬」は長崎俊一が脚色・監督しハイビジョンで映像化されBS-iで放送されたが、これも荒涼とした心象風景が印象的で見応えがあった。天海祐希の好演も光る。なお、「OUT」は中田秀夫監督でハリウッド・リメイクが決まっている。
今後期待したい映画化は宮部さんの「火車」である。これ、鄭義信と崔洋一の共作によるシナリオが数年前に完成しているはずなのだが、その後どうなったのだろう?
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