エンターテイメント日誌

2004年07月10日(土) 臭いキムチ映画はもう御免。<ブラザーフッド>

今日の韓国映画ブームの先陣を切った姜帝圭(カン・ジェギュ)監督の「シュリ」はジョン・フランケンハイマーの「ブラック・サンデー」(1977、日本未公開)と ウォルフガング・ペーターゼンの「ザ・シークレット・サービス」(1993)を足して二で割ったような映画だったが、それはそれで娯楽に徹した作りで非常に面白かった。だから今回の新作「ブラザーフッド」には大いに期待していたのだが、それだけ観終えたときの落胆は大きかった。評価はDである。

「ブラザーフッド」は明らかにスピルバーグの「プライベート・ライアン」の稚拙なパクリである。まず現代の場面から始まり、年老いた主人公が登場して過去を回想する形で50年前の戦争へと繋がる構成が全く同じだし、そのえぐい戦場描写とか、手持ちカメラを多用し高速シャッターによる撮影でドキュメンタリーのような臨場感を出す手法まで完璧にそっくりである。そのあからさまな相似に対して「そこまでハリウッドの模倣をして、お前は韓国のフィルムメーカーとしての誇りがないのか!?アメリカ様はそんなに有り難いのか?」と問い質したくなる情けなさ。おまけに冒頭の音楽がこれまたジョン・ウイリアムズが「プライベート・ライアン」のために書いたものと類似している。戦闘場面の音楽は今度は「ブラックホーク・ダウン」のハンス・ジマーそのもの。もう、たいがいにせいや!これで「プライベート・ライアン」や「ブラックホーク・ダウン」みたいに戦場を客観的に描くことに徹してくれるのならまだ観るに堪えるのだが、ここに韓国お得意のあざとい泣かせの場面を挿入するんだからもう堪らない。兄弟愛とか親子愛とかはっきり言ってどうでも良いんだよ。大仰な列車での別れ、妻と子供の写真を嬉しそうに仲間に見せた兵士が直後に殺されるという陳腐な手法、あるいは主人公が幸せだった過去を回想する場面で、これでもかとスローモーションを多用するくどい描写とか、もうウンザリ。戦争映画にメロドラマを持ち込むな!この馬鹿たれが。(以下ネタバレあり、要注意)

婚約者がスパイと勘違いされ殺されて、弟も悪代官ならぬ腹黒い司令官のせいで焼き殺されたと誤解した兄が北朝鮮に寝返るプロットには笑ったね。いや〜、これってギャグ映画だったんだ。おまけにそれを知った弟が今度は単身38度線を超え北に兄を救出に向かうんだもの、もう無茶苦茶。戦場で再会するふたり、しかし怒り狂っている兄は弟が必死で呼びかけてもなかなか彼を認識できない。そんなんあり?あれだけ弟を愛していたのに??あ〜アホくさ。

この映画を観て戦争の狂気を云々するよりも、僕はむしろこの映画を観て泣ける観客の荒廃した精神に対してこそ、戦慄を覚えずにはいられない。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]