2004年01月18日(日) |
アカデミー賞有力候補二題 |
「イン・アメリカ/三つの小さな願いごと」評価A:アカデミー賞では脚本賞にノミネートされるであろう。非常に優れた作品だがオスカーの作品賞・監督賞へのノミネートは難しい状況。なぜならこの映画はアイルランド・イギリスの合作だからである。ハリウッドの祭典なのだからアメリカ映画に主要部門の賞を与えたいというのは当然の心理である。しかしその点では脚本賞はリベラルだから(昨年はスペイン映画「トーク・トゥー・ハー」が受賞)十分受賞の可能性あり。アイルランドのフィルム・メーカー、ジム・シェリダンが実の娘たち(ナオミ&カーステン・シェリダン)と共同で脚本を書き、故国で弟のフランキーを脳腫瘍で失った実体験をひそやかに織り込んでいる。つまり、これは家族の物語であり、その切実な想いが観るものの心に響く温かい名品である。実は僕はシェリダンの「マイ・レフトフット」(89)や「父の祈りを」(93)はあまり好きではない。だから今まで僕とは無縁の作家だと想っていた。しかしこの映画には胸打たれ、映画館の暗闇で心地よい涙を流した。完敗。子役の姉妹が素晴らしい。<如何なる名優も子役と動物には敵わない>というジンクスがあるけれど、あれは反則だよな。
「ミスティック・リバー」評価B-:アカデミー賞では作品賞・監督賞・主演男優賞(ショーン・ペン)、助演男優賞(ティム・ロビンス)、脚色賞のノミネートは確実。作品賞での受賞はまずあり得ないが、各男優賞については最有力。ミステリの出来としては見事である。しかしそれはあくまで原作者デニス・ルヘインの功績であり、映画の評価とは無関係である。また充実した役者たちのアンサンブルも素晴らしい。しかし、それ以上の好意的評価をこの映画に与えることは出来ない。余りにも結末が理不尽で不快なために、納得いかないまま映画館を後にした。イーストウッドの映画なら「許されざる者」や「マディソン郡の橋」の方を高く評価したい。
ところで、「ミスティック・リバー」の日本における宣伝文句<もうひとつの「スタンド・バイ・ミー」を見るために、あなたは大人になった。>って、いくらなんでも酷くない?少年たちが登場するということ以外、両者には全く共通点ないし。日本のワーナー宣伝部、もうちょっと真摯に頭捻れよ。
|