エンターテイメント日誌

2003年07月20日(日) <草原の輝き>と映画をめぐる冒険

Though nothing can bring back the hour
Of splendour in the grass,of glory in the flower
We will grieve not, rather find
Strength in what remains behind

草原の輝き 花の栄光
再びそれは還(かえ)らずとも
なげくなかれ
その奥に秘められたる力を見い出すべし
(高瀬鎮夫 訳)

これは映画「草原の輝き」(1961)で引用された、ワーズワースの詩の一節である。「草原の輝き」は忘れ難い青春映画である。主人公の青年と女の子は深く愛しあっている。悪人がいる訳ではない。そして戦争で引き裂かれるのでもない。しかしふたりは運命の皮肉から、結局それぞれ別の道を歩むことを決意する。・・・非常に辛い映画である。しかし僕は大学生の頃、この映画と出会い、そして深い感銘を受けた。この作品で、生きるということの難しさを学び、一方で、いや、だからこそ人生は美しいと想った。

作家の村上春樹さんは著書「映画をめぐる冒険」(現在絶版)の中で、この映画について触れ、
あるいは僕の涙腺が弱すぎるせいかもしれないが、観るたびに胸打たれる映画というのがある。『草原の輝き』もそのひとつである。
と書かれている。また、この映画のナタリー・ウッドについては
青春というものの発する理不尽な力に打ちのめされていく傷つきやすい少女の心の動きを彼女は実に見事に表現している。
とある。

昨日、久しぶりにこの映画をDVDで観ていたら、自然と村上さんの小説「ノルウェイの森」の物語を想い出した。あの小説を読んでいる時の胸の痛さと共通の感情を間違いなくこの映画にも覚えるのである。

僕はかつて、「ノルウェイの森」と「草原の輝き」の関係について、村上さんに直接メールで訊ねたことがある。そしてなんと返事を頂いた。その件については詳細をわがHPのある場所に掲載しているので興味ある方は探してみて下さい(掲載にあたってちゃんと許可はとってある)。

映画を語る事は自分自身を語ることだ。薄っぺらな人間は薄っぺらなことしか書けない。文章の行間に、その書き手の今までの人生経験や生き方、信条が鮮やかに浮かび上がる。それはある意味空恐ろしいことでもあるのだが、一方で非常に抗し難い魅力がある。僕はこれからもその行為を勇気を振り絞って続けていくだろう・・・


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]