2002年03月17日(日) |
ピクサーvsドリーム・ワークス |
これは何度も強調している事だが、未だ勘違いしている人が後を絶たないのでもう一度書く。「モンスターズ・インク」はピクサー社の映画であって、これを「ディズニー映画」と称して過去のディズニー・アニメーションとごっちゃにして「ディズニーらしさ」を論じるのは全くナンセンスである。確かに配給はディズニーだが、それなら貴方はアメリカではディズニーが配給した「もののけ姫」や今年の夏全米で配給予定の「千と千尋の神隠し(英語タイトルSpirited Away)」を「ディズニー映画」と呼んで「ピノキオ」と比較したりしますか?デビッド・リンチの「ストレート・ストーリー」は最初にシンデレラ城のロゴ・マークが出てきますが、あれも「ディズニー映画」ですか?嗚呼、アホくさ。
今年のアカデミー賞で最大の注目は新設された長編アニメーション部門をどの作品が征するかである。ディズニーとタッグを組むピクサーの「モンスターズ・インク」とディズニーから追い出されたカッツェンバーグ率いるドリーム・ワークスの「シュレック」の事実上の一騎打ちであることは間違いない事実だろう。ピクサー=ディズニー陣営が勝つか、反ディズニーのドリーム・ワークスが勝つのか、その受賞の行方は今後の両者の命運を握っていると言っても過言ではなかろう。熾烈な戦いが展開されているのだ。
で両者を観た僕の結論は、捻りの効いた「シュレック」の圧倒的勝ち。ディズニー・アニメに対する皮肉も冴えて断然面白かった。「モンスターズ・インク」は確かに良い作品なのだが、優等生過ぎるというか物語が直線的で余りに「おこちゃま向け」なんだなぁ。ピクサーの過去の作品「バグズ・ライフ」や「トイ・ストーリー2」の方がプロットがよく練られていて、創意工夫が感じられた。特に<おもちゃにも歴史がある>という独自の視線を持った「トイ・ストーリー2」は心底感銘を受けたのだが・・・。それに「モンスターズ・インク」にはスシ・バーや富士山が登場したりして、監督の親日感情は嬉しいのだが、わが国が誇るSF漫画の巨匠、藤子・F・不二雄が「どらえもん」で生み出した<どこでもドア>をパクっちゃいけないぜ。「ゲゲゲの鬼太郎」の目玉おやじまで登場するし(^^;。これでは「ジャングル大帝」を丸ごと盗んだディズニーの「ライオンキング」や、「ふしぎの海のナディア」を模倣した「アトランティス」と同じじゃないか。「ライオンキング」事件の際、周囲の大騒動はよそに結局手塚プロは「ディズニーに真似されたとういう事実を天国の手塚治虫も喜ぶことでしょう。」と裁判に訴えなかったが(多くの弁護士が、手塚プロは訴訟さえすれば楽に勝訴していたであろうとコメントしている)、それに倣って藤子プロも静観の構えなのだろうなぁ。嗚呼、何たる日本人の美徳よ・・・閑話休題。
「モンスターズ・インク」は確かに最後の追っかけ場面ではCG効果も抜群で盛り上がるのだが、それだけの映画なんだよねぇ。それにしてもピクサー作品恒例となったエンド・クレジットにおけるNG集の方が本編より面白いというこの現状はどうなのよ?というか前座で上映された短編”For the Birds”は「モンスターズ・インク」と異なり、文句なしにピクサーの会心作だった。正に抱腹絶倒、映画館の観客もこちらの方が盛り上がっていたゾ。この短編はアカデミー短編アニメーション部門にノミネートされているのでピクサーはこちらで受賞するんじゃないかな?
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