狛犬堂備忘録
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自宅翻訳を細々と請けるようになって、そしてフルタイムで外で働くようになって、一年経った。朝起きて夜更けに眠りにつくまで目を開けているあいだはずっと仕事をする毎日にも慣れた。 どちらが主で副かというのはおのおのが一日に占める時間を見れば明らかなのだが、いま訳しているものは副としてしまうには少々手強い。ネタは、特許業界ではおなじみの有効性調査と侵害調査に関する海外事務所からの回答である。いつもの比較的あっさりとしたページ数の通知書と違って、二件合わせて数十ページあるので、たいそう時間がかかる。なじみのない特許系法廷用語を調べたり、内容に含まれたさまざまな出願のクレーム(苦情ではなく、特許発明のキモを独特の文体で記した説明部分をそう呼ぶ)の体裁を考えたり、夜だけでは作業時間が間に合わないので、休日も突貫工事である。予習ができないので、語学学校も一回サボった。一年前とくらべてスピードはかなり上がっているのにこれだから、仕事を始めたばかりでこんなのが来ていたら即辞退していたろう。依頼側がそのあたりを考えているとは思えないので(実際、東欧某国における侵害裁判資料ネタの特急依頼を断ったことがある)、ラッキーな配分だったといえるだろう。
十日かけてざっと日本語に直したので、あと十日かけて見直しをする。猫をじゃらして傷だらけになったあと(うちの猫と遊ぶと流血を免れない)、敵の身体を丁寧にブラッシングするようなこの仕上げ工程も、時間はかかるが、目に見えて文章がすっきりしていくのが楽しくて好きだ。
本来なら、いまこれを書いている時間も上記の作業にあてているはずなのだが、乗った電車があまりに混んでいるのでケータイを握るのがせいいっぱいという有り様(笑) ひまを見つけて書き残しておかないと日々は仕事の合間に流れ去って、何もかも忘れてしまう。二年目はどんなふうに過ぎていくのだろうか。
次は、たぶん萌えをいかにして殺すかについて書くことになるだろう。書いて捨てないと辛くてしかたがないので。やれやれ。
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