東京の片隅から
目次きのうあした


2020年06月19日(金) 「大きな鳥にさらわれないように」

川上弘美「大きな鳥にさらわれないように」読了。
緩やかな滅亡に向かう世界の「私」たちの話。
連作である。一作ごとに主人公は異なるがおそらく女性で、すべての一人称が「私」。読んでいくと前の物語の「私」が次の物語にも現れるので、これは同じ世界の話なのだとわかる。
のだが、読んでいく家に何とも言えない背筋の寒さが。自分の脳内で想像している「私」と話の中の「私」の姿がちょっとずれている、と思ったときには何とも怖い。腹の底がざわざわする読後感。そして最後まで読むとまた最初から読みたくなってしまうのであった。さすが川上弘美・・・。
いまのところ、終末小説としては新井素子の「チグリスとユーフラテス」と双璧(私の中では)。


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