東京の片隅から
目次きのうあした


2017年09月18日(月) 奈良美智「for better or worse」

台風一過、愛知県は豊田市まで奈良美智を見に行く一人旅。
巡回すると思ってのんびり構えていたら巡回なし、しかも個人蔵の作品がここまで展示されるのは今回だけかもしれないとのことで、急遽行くことにした。
新幹線で西へ向かう。豊橋で名鉄に乗り換え、豊田市へ。関東の私鉄に比べると駅間が長く、踏切が少ないなぁと思う。知立で単線の三河線に乗り換える。豊田市の一つ手前、上挙母で下車。古い町らしい、木造の、店舗だった建物が並ぶ街をのんびり歩く。この作りは城下町的だなぁと思っていたら、やはりそうらしく、美術館がある丘にはもともとお城があったらしい。
豊田市美術館は綺麗な建物。前庭の池にはリング状に水が湧いていて、リチャード・ロングを思い出す。

奈良美智さんは24時間テレビのTシャツデザインやパンクバンドのアルバムジャケットなどで親しみやすいのか、それとも美術館が市民割引をしているからなのか、老夫婦や親子連れ、若い女性たちなど、普段なら美術館を訪れないであろう客層がむしろメイン。それぞれ感想を言い合いながら、でも意外なほど静か。
印刷物ではさらさらと簡単に描かれたようなイメージだが、実物を見るとずいぶん違う、むしろ緻密な雰囲気。色の塗り重ねも線もものすごく上手い。これはイラストではなく、確かに美術だ。絵の内側から光が溢れるようで、圧倒される。いやこれはすごいわ・・・。
絵の中のこどもたちのまなざしはこちらを見ているようなもっと遠くを見ているような微妙な表情。不思議な感じ。この雰囲気は仏像と似ている、と思う。
ところで、作品貸出者への謝辞のプレートに国内外の個人の名前がずらりと並んでいるのだが、そこにさりげなく混じる「bloodthirsty butchers吉村秀彦」と「増子直純/怒髪天」ににやりとする。

帰途、新幹線の時間まで少し余裕があったので、豊橋の街をぶらぶらする。路面電車に乗って豊橋公園へ。ここも城跡らしく、石垣が残っている。豊川が大きく蛇行しているところにあり、立地がいい。門脇の歩哨所があるのでここは連隊が置かれていたことがわかる。
休日の夕方、店も開いておらず、駅前以外、街はほとんど人が歩いていない。公園内外で散歩をしているのはご老人ばかりであった。
もらったクーポンで練り物店に寄り、ちくわを貰って、貰うだけでは申し訳ないので季節もののかまぼこを買い足す。駅までぶらぶら歩いて、家へのお土産を買って、帰宅。
疲労感はあるが、満ち足りた旅であった。送り出してくれ、一日子どもの相手をしてくれたまーさんに感謝。


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