東京の片隅から
目次きのうあした


2017年03月23日(木) スラヴ叙事詩

昨日、保護者会の前にミュシャ展を見た。
ミュシャ展は数年に一度開催されるが、今回の目玉は「スラヴ叙事詩」。1点だけ来たときはあったが、そもそもまとまって国外に出るのはこれが初めて。遺族からは「国宝のようなものだから国外への貸出を禁止すべきだ」という意見も出たそうで、絵の劣化防止などを考えると揃ってみられるのはたぶん生きている間に今回だけだろうなぁ、と思う。
ところで、最初にミュシャ展を見たとき(もう四半世紀前の話である)の解説で「スラヴ叙事詩」は地方の辺鄙なお城で夏だけ公開(それも毎年ではない)という変則スケジュールだと聞いていたのだが、最近はプラハで見られるようになったらしい。そうなのか。じゃあ老後の楽しみに。

で、感想。
画家はすごく魂を込めて描いたのはわかる。人物そのものも素晴らしいし、構図も写実と装飾デザインとが渾然一体になって違和感がない。劇や映画の一場面を切り取ったよう。
でも、見ていて何だかもやもやする。
それは、描かれた時代背景もあるのだろうけど、全作通してテーマが「スラヴ民族の苦難と抵抗の歴史」的なトーンで描かれているからなのだろうと思う。流石に時代が近すぎるハプスブルク朝時代などは描きにくかったのか描かれていない。第一次世界大戦後やっと得た民族自治の高揚感があるのはわかるのだけど、全編通して「被支配」「抑圧されてきた」「被害者」意識が前面に打ち出されていて、確かにそうではあるのだけど、逆に見るとまた彼らに「支配」「抑圧」された人々もいるわけで、ちょっと振れすぎかなぁという感覚がある。現在の世界情勢を見ると過剰な自意識が紛争を生み出している中で、素直に「素晴らしい」と言い切れない。もやもやした気分。

他の作品、特にパリ時代のものは以前の展覧会でも見ているので、ほどほどにして割愛した。
そしてまた使う当てのない絵はがきを大量購入。いいんだキレイだから。


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