会社の休憩室に柚子が山盛りになっていた。誰かが自分の家から持ってきたらしい。一つもらって帰る。鞄の中で仄かにいい香りがする。不意に上の子どものことを思い出す。面会に行ってもほとんどの場合は目を閉じていたのだが、ふとした拍子にこちらをずっと見ているときがあった。静かなまなざしだった。チューブのせいで泣き声を聞くこともなかった。いや、一度だけ聴いたような気がする。かすかな声。でも他の子どもの声だったのかもしれない。私によく似た顔立ちだった。