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45歳というのは、人生の中でどういう「時」を占めるのだろうか。内田咲世子は45歳の商業版画家。更年期障害があらわれ、生きているのが嫌になることもある。何かいいことがあるのだろうかと、だらだらと続く残りの人生を思う。そんな彼女の前に現れたのが、17歳年下の映像作家。映画制作をめぐるトラブルがあり、今はカフェでバーテンをしている。
とてもきれいなロマンス小説で、いかにも「男性」が書いたロマンス小説だなあと、ここ2〜3年、ブームのロマンス小説にどっぷりつかっている私は、生意気なことを思う。リアルなロマンスと陳腐なご都合主義の境界はどこだろうと。
ただ、ハーレクインとは違って、言葉がいい。歳月の重みを身をもって感じるようになってくると、何でもない言葉が、時によく響く。
わたしたちはなんとか生き残って、すこしずつでも前進している。たいしたものではないかもしれないけれど、なにかをつくりだしている。
死ぬ思いで仕事をして、なんとか甘い人間のまま生き延びる。それくらいがわたしたちにできるベストなのかもしれない。これからはすごい悪人にも善人にもなれそうもないからね。
年を取ると、この世にある仕事のほとんどで自分がまったく無力なのが、わかるようになる。それでいて、きちんと自分の仕事をしてきた人なら、自分だけにできることも身体でわかるようになってくる。
誰にとっても人生の後半を生きていくのは容易なことではない。
人の死にふれると、人間は一段深い心の顔を見せるものである。 (/ 以上、引用)
ほんとうは、それこそもっとロマンティックな甘い言葉も散りばめられているけれど、何でもない言葉の方が心にひっかかる。作者から言えば、えっ、そんなところ…って、恋愛小説のツボをはずしたところかもしれないけれど。
もちろん肝腎のロマンスも、ステキです。ロマンスそのものと関係のない言葉は、もっと素敵です。(シィアル)
『眠れぬ真珠』 著者:石田衣良 / 出版社:新潮社2006
※漫画化もされています。(吉田まゆみ / 出版社:小学館 )
2003年08月22日(金) ☆宮崎アニメの中のゴーメンガースト。
2002年08月22日(木) 『幻の女』
2001年08月22日(水) 『黒と茶の幻想』
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管理者:お天気猫や
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