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サー・ウォルター・スコットといえば、私が何を どこからどう語っていいのか戸惑うほど古典中の古典。 それなのに、日本ではこの岩波文庫版も切れていて、 簡単に手に入るのはダイジェスト版ぐらい。他の作品も 新訳はないし、ほとんど古書しか入手できない状態だ。
19世紀のイギリスで最も評価されていたスコットランド生まれの 詩人・作家のスコットは、あのモンゴメリやアンデルセンもそうだったが、 とにかく19〜20世紀の作家たちに多大な愛着を呼び起こした伝説の人物。
この『アイヴァンホー』しか読んでいない私が 何を言えるかというと、もう、この本のなかの人間関係について 言いたいことを言い放つのが関の山だ。
ちなみに、『アイヴァンホー』は1819年の暮れに発売されるや、 一週間でたちまち売り切れたという。 歴史ものといっても時代的に合わない虚構の設定が多々混じっているにもかかわらず、 スコットの著作中、人気ナンバーワンだったらしい。
獅子心王リチャードがパレスティナから帰国した当時、12世紀のイングランドが舞台。 ローマ帝国の衰退後、イギリスに定着していたサクソン人が、ノルマン人に征服されている情況下で、リチャードから王位を奪おうとする王弟ジョンの暗躍、 王侯貴族と騎士、奴隷や僧侶などの階級に別れた人間模様と、 キリスト教徒対ユダヤ教徒という宗教的な相容れなさを絡ませ、 シャーウッドの森に住む義賊で弓の名手ロビン・フッドも登場する。
しかし、主役のはずの青年騎士アイヴァンホーは、 サクソン人の貴族セドリックが後見しているサクソンの王の末裔、 ロウィーナ姫と恋仲になったため、実の親であるセドリックに勘当されている。 しかも、戦場でノルマン王家のリチャードに仕えている。 そこで帰国後、名前を隠して槍試合に出る時、「勘当の騎士」と名乗るのもすごいが、 結局試合の結果、名誉は得たが大怪我をしてリタイアしたまま、 後半4/5あたりまで何の活躍もしない。最後の試合も活躍というよりは、相手が自滅するだけだ。
前半を読んでわかったのだが、それもそのはず、主役は彼ではないのだ。 タイトル的にはあまり意味が限定されないにもかかわらずインパクトのある名前で、 これはスコットが考えついたグッドなネーミングらしいのだが、 アイヴァンホーことウィルフレッドは、 どう考えても本書の主役ではないのだった。
→その2へつづく
(マーズ)
『アイヴァンホー』(上・下)著:サー・ウォルター・スコット / 訳:菊池武一 / 出版社:集英社2005
2003年10月06日(月) 『マクベス』(その1)
2000年10月06日(金) 『ささなみのアケロン』
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管理者:お天気猫や
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