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子どもと秘密の友だちをテーマにした リンドグレーンの短編集。
表題にもなっている「親指こぞうニルス・カールソン」を 読むために借りてきた。 ベッドの下から出てきた小人と仲良くなった男の子が、 床下に出ているトゲにさわると小さくなって、小人の家に行ける、 そんなお話を子どものころに愛読していた。なのに、本のタイトルがわからない。 どうにかしてもう一度読みたいのだ、という人がいて、あれこれ人にたずねて ネットで探し、やっと「リンドグレーン」とわかったのだった。 『長くつ下のピッピ』や『やかまし村』『カッレくん』とは トーンのちがう、透明水彩のような世界。
そしてここに収められた短編のほとんどは、スウェーデンの首都ストックホルムを 舞台にしている。北欧のデザインが身近になったこのごろ、 生活の雰囲気も、イメージしやすくなったのではないだろうか。
さて、親指こぞうの話はというと、さわると小さくなったり大きく なったりできるのは、ネズミ穴の脇にある「クギ」だった。 どうしてそうなるのかは書かれていないが、ともかくそれにさわって 「キレベッピン」というおまじないの言葉を唱えれば良いのだ。 主人公の男の子、6才のベルティルは、毎日毎日、たった独りで 働きに出た親の帰りを待つ暮らしをしている。 そんな子どもが、ネズミ穴を間借りしている小人のニルスと出会い、 友情と秘密の冒険によって、さびしさを忘れてゆく。
「うすあかりの国」では、さびしさと絶望にとらわれた男の子が、 窓からやってくるリリョンクヴァストさんという小さな男の人に 連れられ、夕方の青い闇に包まれた街を飛び回る。
「だいすきなおねえさま」は、両親も知らない双子の妹によって 地下の国でさびしさを癒す女の子が、現実の世界で生きるきっかけを 得る物語。
どの子も、それぞれに事情はちがっても、子ども特有のさびしさを 生きている。大人になれば、いろんな方法で折り合いをつけてゆくことも できるさびしさ。 むしろ独りでいたいときに誰かがいることのほうが多いのかも しれず、そのことによってよけいにさびしさが増すこともある。
子どもの抱えるさびしさは、大人にかまってもらえていない、 子どもがじゅうぶんだと感じるほどには見守られていないさびしさで、 かまってもらいたいのだが、大人には期待できないこともわかっている。
さびしさの度数が高い子どもにとって、 「本当はいないのかもしれない」不思議な存在こそ、 強い絆を結べる相手なのかもしれない。 甘えられないということは、確かなよりどころがないということでもある。 「いないのかもしれないし、どこかにいたっておかしくない」 そんな不確かな存在と遊ぶことで、子どもは満たされる。
同じように、本を開いて秘密の友だちを訪ねることができるなら、 やはり子どもは満たされるのだ、と思う。 ポケットのなかは空っぽでも、小さな友だちがそこに入って いるつもりになっていれば、世界は変わって見えるのだから。 (マーズ)
『親指こぞうニルス・カールソン』(リンドグレーン作品集16)著者:アストリッド・リンドグレーン / 絵:イロン・ヴィークランド / 訳:大塚勇三 / 出版社:岩波書店1974
2002年05月16日(木) 『スター☆ガール』から『ザ・ギバー』へ(さまよう連載その1)
2001年05月16日(水) SARAH MOON
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管理者:お天気猫や
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