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夢の図書館新館

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-- 2004年07月16日(金) --

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『床下の小人たち』

小人たちのシリーズ第一作。 原題は『The Borrowers』。 英国で発表されたのは、1952年である。 メアリー・ノートン(1903-92)は、作家であると同時に 女優でもあった。 児童書を書くようになったのは40代になってからで、 借り暮らしの小人たちを描いた このシリーズによって、児童文学史に名を残している。 表紙絵は『ナルニア』シリーズでもおなじみの ポーリン・ベインズ、挿絵はダイアナ・スタンレー。

英国の古い田舎の屋敷に、 「借り暮らし」と呼ばれる小さな人たちが 住んでいた。 主人公である借り暮らしの一家には、 ポッドとホミリーの夫婦に、 アリエッティという好奇心いっぱいの女の子がいる。 ずっと前に読んだときには、 親子というより、おじ夫婦と姪のように感じられたが、 今はちゃんと親子に見えるから不思議。 彼らにとって、人間は、借り暮らしを養うために存在する 生き物で、人間に一度でも『見られ』たら、 もうその家にはいられないのだという。

しかし、アリエッティは、人間の男の子に『見られ』、 あろうことか、友達になってしまうのだ。 そして、アリエッティたちの一家は、 安穏と過ごした時を背後に置いて、 新しい冒険に飛び込むことになる。

彼らの生活のこまごまとした描写は、 ストーリーの運びとは別の楽しみに満ちている。 人間がドールハウスのなかで暮らすかのように ままごと遊びの想像力をかきたて、 知恵と実用の織りなす部屋の様子は、 大人をあっけなく子どもに戻してしまう。

彼らは、「借りる」ことを仕事にしている。 働いてお金を稼ぐ必要などない。 なぜかというに、社会がないからだ。 彼らの家族は孤立していて、他とのつながりがない。 そもそも、彼らの種族は、そんなに団結していない。 貨幣経済とは関係のない生き方。 しかし、人間はそんな彼らを泥棒と呼ぶけれど、 人間だって、世界から借り物をして生きているのでは ないのか?生まれたときにも、死にゆくときにも 身一つの人間は、借り暮らしの小人たちより 身体が大きいというだけで、それすらも地球にとっては 資源が減って迷惑なことではないか・・・ メアリー・ノートンのシニカルなつぶやきが 聞こえてきそうだ。

グウィンの『ゲド戦記』ではないけれど、 シリーズの第五作『小人たちの新しい家』は、 四作目が出てから ほぼ20年後に書かれている。 10代に読んだときは、四巻目で止まってしまって いたので、今度は最後の締めくくりまで、 小人たちとともに旅をしてみようと思う。 (マーズ)


『床下の小人たち』著者:メアリー・ノートン / 訳:林容吉 / 絵:ポーリン・ベインズ、ダイアナ・スタンレー / 出版社:岩波少年文庫2000新版

2003年07月16日(水) 『いまを生きる言葉「森のイスキア」より』
2001年07月16日(月) 『100文字レシピ』

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