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アンデルセン(1805-1875)の創作童話集を あらためて読む機会があった。
3巻のシリーズで、第2巻は「人魚姫」や 「マッチ売りの少女」など、 12の短編が収められている。
アンデルセンは子どものころくり返し読んだ 童話全集のなかにもたくさん入っていて、 読んでいると、そのころの記憶や感覚がよみがえってくる。
タイトルはちがったけれど、 「野の白鳥」で、主人公のエリザ姫が、 継母に魔法で白鳥にされた11人の兄達を救うため、 命がけでもくもくとイラクサの上着を編む場面は、 かつて自分の指先で感じた棘の痛みすら、よみがえってくる。
私の読んでいた人魚姫はかなり割愛されていて、 姫の求めていたのは王子の愛だけではなく、 人間のように死んだ後も永遠に生きるための「魂」 だったことも、あらためて知った。
服が完成するまで口を聞いてはいけない、 というエリザへの交換条件と、 人魚姫が人間の足とひきかえに魔女に声を奪われることは、 同じように言葉のコミュニケーションを禁じられるという 意味で、興味深い。口がきけさえすれば、彼女たちの 困難は、ほとんど意味をなさないのだから。
「パンをふんだ娘」や「天使」、 「ある母親の物語」のように、 神と人間の関係を描いた説話的な悲しい話も、 アンデルセンの大きな特徴であることも、 あらためて思い知った。
「マッチ売りの少女」は本当に短く、 まさにマッチの燃え尽きるあいだに語られる かのような悲劇なのだった(救いでもあり)。
幸福だった雑草のヒナギクとヒバリの生き方と 願わざる死を描いた「ヒナギク」は、 いわゆるハッピーエンディングではないし、 お姫様も王子様も出てこないけれど、 作家の死生観がてらいなく映し出され、 ニューエイジ的ですらある。
「ヒナギク」は「すずの兵隊」(この巻には入っていない)で 描かれた死後の魂の救いには触れていないし、 むしろ唐突に訪れた悲劇で終っているかのようだが、 やはり二つの話には、救われるべき魂への想いが 横たわっているのだと思える。 (マーズ)
『アンデルセン童話集2』 著者:ハンス・クリスチャン・アンデルセン / 絵:初山滋 / 訳:大畑末吉 / 出版社:岩波少年文庫2000新版
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管理者:お天気猫や
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