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過去と現在の関係は、そして未来は。
親子の確執と共感を、タイム・パラドックスと ハードボイルドアクションの両輪でドライブする。
1979年、浅草で、二人は出会う。 目的を見つけられず、定職にも就かず毎日を浪費していた 宮本拓実は、トキオと名乗る青年に出会ったのだ。 千鶴子というしっかりものの彼女もいるが、いつも がっかりさせてばかりの拓実。 そんな拓実の生い立ちや、誰も知らないような事情を知っている くせに、時代から取り残されたようなトキオ。 彼と時を過ごすにつれ、 拓実のなかで、変化が起こる。
トキオと拓実は、突然消えた千鶴子を探し、 千鶴子の持つ情報目当ての追手をかわしながら、 名古屋、大阪へと向かう。 ちりばめられた当時の世相や流行に、私たちは、 ときどき、ページをめくる手にブレーキをかける。 20年前。 それは、そんなに遠い過去ではない。 ここに登場するあれこれは、今も記憶に鮮明だ。 その当時はわからなかったけれど、今となってみれば、 20年など、何ほどのものだろう。 遠くはないけれど、決してもう手のとどかない過去。 拓実と同じように、目的も何もなかった日々。
闇の世界とわたりあう命をかけたレースに、 人生を遠ざけていた拓実は、真剣にのめり込んでゆく。
この姿には、なつかしさがある。 そうだ、これは彼だ。 ハイタカであり、ゲドとなったあの若者。 若い日に自ら招いた災厄がもたらした魂の試練を経て、 傲慢さをぬぐい去った、後の大賢人にして大魔法使い。 ゲドの姿が拓実に重なったことで、シンパシィが増した。
私たちは、読みながらずっと考えている。 トキオが姿を消すのはいつなのだろう。 いったい、ほんとうのトキオは何者なのだろう。 未来から来た青年が、目的を果たして いなくなるときを、思い描く。 でもやがて、どうしようもなく、そのときは来る。 私たちすべてに死が訪れるように、確実に。
未来を思い煩うよりも、過去と向き合って いまを生きること。 私たちにできることは、それだけなのかもしれない。 (マーズ)
『トキオ』 著者:東野圭吾 / 出版社:講談社2002
2001年02月09日(金) 『Feng Shui for Cats』
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管理者:お天気猫や
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