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夢の図書館新館

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-- 2004年01月22日(木) --

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『ハンニバル』 その4

レクター博士、数年ぶりに性懲りもない標的に(私の)。

先日観た、劇団四季のミュージカル『オペラ座の怪人』。 日本では専用劇場がなく、1988年から全国各地で公演している。 本家のロンドンでは、1705年開業という、なんともゴージャスな古さの、 ハー・マジェスティーズ・シアターで1986年からロングラン公演。

『オペラ座の怪人』は、今ではこの劇場のオーナーとなった、 作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバーの金字塔である。 私とシィアルは、2000年の秋にマチネーを観たのだが、 当時私は、チケットに書かれていた「ストール」という 言葉の意味がわからなかった。この劇場は4層になっていて、 1階席をストールと呼んでいたのだ。

ゆらゆら、ぐらぐらと傾(かし)ぎながら天井へ引っ張り上げられる シャンデリアのあやうさ、衣装の微妙な色合い、 うすぐらく秘密めいた劇場の空間。

久しぶりに、処は変れど、かの怪人に再会して、 やはりそうだったのだ、と改めて思い込む。

トマス・ハリスは、『ハンニバル』で、この世界を ハッピーエンドに描きたかったのだと。 彼は、異形で孤高の名優レクター博士に、 オペラ座の怪人が叶えられなかった、見果てぬ夢を叶えさせた。

ハリスが仮に舞台を観ていなくても、ガストン・ルルーの原作小説の ファンであったことは、想像に難くない。 が、原作への思い入れが深ければ、アレンジの好みがどうであっても、 劇場へも足を運ぶと考えるのが普通だろう。 私は信じる。 ハリスはこのミュージカルを、どこかで観ていると。

2作品の共通項は、5ポイント。 かつての覚え書き、『ハンニバル3』にも書いたのだが、 この舞台は、オークションに続く劇中劇から始まる。 劇中劇が始まると、一人の役者が舞台中央で、 巻紙を、ぱっと開いて見せる。 そこには、『ハンニバル』と書かれている。 実在のハンニバル将軍の話だが、まず、このタイトルが1点。

ハリスの『ハンニバル』で、最後近くに出てくる 豪華なオペラ座でのシーンと、 『オペラ座の怪人』の演じられる ハー・マジェスティーズ・シアターのイメージも重なる。 ここで2点。

そして前にも書いたことだが、男性二人の共通点。 二人とも、種類はちがうが、奇跡的な才能の持ち主である。 知的で、凶暴で、影に生きる男たち。 怪人のつけている鬘の後頭部は、レクター博士と同じく、 ふさふさ、つやつやとして「カワウソ」そっくりだ。 ただし、その描写が登場するのは『ハンニバル』だけ。 しかも、この本でのレクター博士は、怪人の仮面を象徴するかのごとく、 整形手術で顔を変えている。 3点入った。

そしてやっぱり、ヒロインの名前も似ている。 クラリスとクリスティーン。若くて純粋で、美しい。 生来の才能にあふれながら、怪人の手ほどきによって開花する クリスティーンと、レクターのご指名で有名になるクラリス。 これで4点。

劇場に棲みつき、自在に行方をくらましながら、 舞台の表と裏を恐怖に陥れるファントムと、 この世界の背後にひそむ悪意の象徴として描かれた、 逃亡犯カニバル・レクター。 ほら、やっぱり、5点満点(少なかった?)。 (マーズ)


『ハンニバル』上・下 著者:トマス・ハリス / 訳:高見 浩 / 出版社:新潮文庫2000

2003年01月22日(水) 『滅びのモノクローム』
2002年01月22日(火) 『いまやろうと思ってたのに…』(その2)
2001年01月22日(月) 『ザ・マミー』(上・下)その2

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