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初めての紫堂恭子ワールドは、 魔法学院ものファンタジー。
二人の王が協力して国境につくった、平和地帯「オリスルート」。 ここに設立されたシルヴァン学院は、 世界に向けて送り出される紛争の調停役、 『金枝の使者』を輩出することで知られる、 権威ある魔法(アート)学校。
シルヴァン学院の男子生徒、 アリアン、ヴィンセンス、フェンネルの三人組は それぞれ全く違う性格だが、なぜかいつもひとからげになっている。
アリアンは兄弟たちの生存競争に揉まれて育ち、 持ち前の悩まない性格と笑顔で、順応力は高い。 黒髪で長身のヴィンセンスは大国カラマスルートからやってきた。 黙っていると美形。 ナイーブな外見のフェンネルは、魔術国ラバンサラの王族。 ブラック・アートの血筋への恐怖を抱えている。
そんな彼らが、闇から助けた伝説のロスマリン姫の魂とともに、 学院の特命を負い、金ならざる『銀の小枝』を胸に、 各国へと旅をする。 中立地帯にあるシルヴァン学院の生徒とはいえ、 ふとしたきっかけで、いつ周辺国が戦争状態になるか わからないという状況のもと、まだヒヨコの三人は、 悩める我が身を抱えながら、人間どうしの関わりを学んでゆく。
彼ら三人とも、順にロスマリン姫が憑依して 完全に女性化するというコメディタッチの展開が、 『仮面の王』という強大な敵との戦いに花を添える。 男子学生の女装というのは、学園少女漫画の定石だが、 最後に女性化することになるフェンネルは、 後半でシリアスなヒロイン(?)として大活躍。
何せ若い三人組の冒険なので、表面はギャグあり花ありで 軽く読めるのだが、中心にあるのは、若い人たち特有の コミュニケーションの未熟さといった問題や、 人それぞれの『生き方』や『幸せ』の提示でもあり、 その深みとのバランスが、とても心地よい。
余談だが、ファンタジー好きのキーワードも楽しめた。 シルヴァン学院は、大魔法使い『ゲド』の学んだ『ロークの学院』を ほうふつとさせる。 同じくゲドからの『レヴァンネン王』も、 名前だけの登場とはいえ、思わず頬がゆるむ。 『ゴーメンガースト』からの『フレイ』は、金枝の使者として登場。 (外見はまったく違うので・・念のため) シリーズを貸してくれた方が、ゲドも入ってるからね、と うれしそうに言っていたとおりである。 これを皮切りに、紫堂ワールドへ繰り出してゆく秋。 (マーズ)
『オリスルートの銀の小枝』1-4 著者:紫堂恭子 / 出版社:角川書店あすかコミックスDX1995
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管理者:お天気猫や
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