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ヘンリー少年は両親を亡くして、ケチケチでガリガリの アガサおばさんと暮らしている。 おばさんは下宿屋をしていて、だれも笑ったのを見たことがない。 それに、『暮らしている』といったって、身内としてというよりは ただで置いてもらっている下宿人程度のつきあいだ。
地下室よりも、狭くていいから屋根裏に住みたいな。 ヘンリー少年の願いは、なかなかかなえられない。 そんなある日、屋根裏の下宿人が、アガサおばさんとケンカして 飛び出してしまい、代わりに、不思議な男の人、エンジェルさんが やってくる。 屋根裏の住人となったハービー・エンジェルさんは、下宿の 朝食を食べないというので、おばさんのお気に入りになる。 はじめは電気やさんだと思われていた。 回路の話なんかするものだから。 金髪で笑顔がすばらしいこの人は、台所をクンクン嗅いで、 ここには『つながり』がたくさんある、と喜ぶ。 どうやら『エネルギー畑』の研究をしてるらしい。 皆、細かいことはさっぱりわからないながらも、エンジェルさんの 影響で、陽気になり、芸術的にすらなってゆく。
そして、エンジェルさんとヘンリー少年は、だんだん歩を詰め、 同志のような関係になり、この家に『つながり』を 思い出させようとするのだった。
私たちは、人間として、ひとりだけで生きていられないことは 頭ではわかっている。 でも、ちゃんと受け入れようとしているかというと、 ドアを閉めている時間が、なんて多いのだろう。
エンジェルさんは、 私たちひとりひとりが、「香り」でもある、という。 あるひとはリンゴの花、あるひとはジャスミン。 ここちよい香りは、誰かをなぐさめ、癒してくれるはず。 エンジェルさんにも香りがあるんだろうか。 それは、菜の花のはちみつ?などと想像してみる。
エンジェルさんの来る前と後とでは、 庭のタチアオイたちも、様子が変わってゆく。 ちょうど今ごろ、あちこちの庭先や畑のわきで 空にむかってのびていくタチアオイを見ると、 そこに住む人たちの『つながり』を想わされる。 エンジェルさんの香りは、タチアオイだったのかもしれない。 (マーズ)
『屋根裏部屋のエンジェルさん』 著者:ダイアナ・ヘンドリー / 絵:杉田比呂美 / 訳:こだまともこ / 出版社:徳間書店
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管理者:お天気猫や
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