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有栖川作品が正々堂々ルールに則り 安心してトリックに取り組める正当派ミステリならば、 地面に引いてあるラインの中だけが 本当に試合の場所なのかどうかという点から 疑ってかからねばならないのが殊能作品。 何が起きても怒らないコンディションの時でないと 読めないと用心していたもんだから 四作めは半年も積みっぱなしで。
帯には「名探偵、最後の事件」 本を開ける前からキています。 さて、覚悟してかかるか。 驚愕の展開にも慌てず騒がず黙々と仕掛けを探します。 我ながら捻くれた読み方だなあ。 でも、作者はこういう読者を対象に書いているに違いありません。 だって、今回は「本格ミステリ」の型への 挑戦のようなスタイルなんです。
ミステリの紹介の場合、困るのは どこからネタばれになるのかと言う点で。 こうしましょう、前作『黒い仏』を読んで面くらい、 今回読むべきか読まざるべきかずっと悩んでいる 本格ミステリファンの方は以下を御参考に、 そのうち読む予定の方はなるべく読後にお読み下さい。
今回おなじみ名探偵の石動さんが調査を依頼されるのは 14年前、高名なる名探偵が解決した奇妙な館の殺人事件。 ペダンティックな過去の名探偵の華麗なる名推理を覆すために 現在の探偵はヒートアイランドと化した都会を 汗だくで駆け回って証言を集める。 そして。 歪んだ館、豪奢な調度、膨大な書物、アカデミックな会話、 狷介な主人、毒のある客人、死んだ幼子、若者の恋、 エキセントリックな名探偵、その助手にして推理作家。 ──かつて存在した物語の全ては「現実」に破壊されてゆく。
長年問われた「本格ミステリ」の「名探偵」の存在意義、 80年代台頭した「新本格ミステリ」へ向けられた誹謗の数々、 多くの推理作家が自虐的に繰り返して来た自問自答が 目に見える姿を形成したような事件です。 でも新本格ファンの皆さん、怒らないで最後まで読んで。 デヴュー作『ハサミ男』を読んだ時から思うのですが、 殊能さんの作品って歪んだ事象を取り扱っていても 御本人の見解はちょっと感心するくらい公正で健全です。 だからこの人はきっと。 いや、でも、この予測が外れたら悲しいな、 そんな事はない。私の推理だとたぶん、 殊能さんは名探偵の事を心から。
‥‥結構ゆらぎましたね。 それで結局どうなったかって? 読むべきか読まざるべきか悩んでいた 「新本格」ファン、「名探偵」ファン、更にマニアの皆さん! 心配はいりません、今回は読後感がとても爽やか。 あれ?もしかしてこの作品‥‥ 新本格生誕20周年のお祝いだったりして?(ナルシア)
『鏡の中は日曜日』 著者:殊能将之 / 出版社:講談社ノベルス
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管理者:お天気猫や
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