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14歳‥‥迸る自我と抑圧する社会との狭間で 多くの者達が迷走し暴走する危うい年齢。 我らがハリー・ポッターも14歳となりました。 これまでの倍はあるとんでもない厚さの 「the Gobret of Fire」を手にして、 こんなに厚いという事は、ついにハリーも 14歳のクライシスに直面するのではあるまいな、と 恐る恐るという感じで読み始めました。
冒頭部分はこれまで毎回おきまりだった Privet Driveでのハリーの退屈な夏休みの場面ではなくて、 どこか分らない村の裕福な一家で起きた惨劇と 未来の凶事を予感させる陰鬱なシーンで始まります。
今年のホグワーツ校は外国の魔法学校と合同で行う 「Triwizard Cup」の舞台となります。 三校の代表選手が三つの試練を体力知力を尽して競い合い、 チャンピオンを決定するというスペシャルイベント。 命の危険は覚悟の上、不正行為も承知の上。 シリーズの中で一番アクション度が高い巻です。
しかしその前に、少年達にとって思いもよらなかった 最も困難な試練が立ちはだかる! こればかりは、さすがのハリーもどうしていいかわからない。 いや、ここは御自分で読んで──笑って下さい。
さて、目覚ましい冒険や思わず吹き出す場面や 以前よりちょっと複雑になった少年達の心の動き等の 本編の流れの底を透かして常に揺らいでいた恐ろしい予感は 最後に現実のものとなってしまいます。 その衝撃は、うすうす覚悟していた以上のものです。 これまで世界中の子供達を夢中にさせていた 「ハリー・ポッッター」の物語は、ここで 子供のための魔法物語である事を止めてしまいます。 だって、前回までは最悪の事態に落ち入っても 「魔法で」なんとかできたのに、 もうホグワーツの魔法ではどうする事も出来ないのです。 現実の前に、邪悪の前に、彼らは絶望的なまでに 自らの無力を思い知らされるのです。
ハリーの14歳のクライシスは一見、 この壮絶な外部の事情に呑み込まれてしまって さして問題にならないように見えますが、 やはりこれは少年の自己クライシスの物語となりました。 なぜなら、全編を通して多くの登場人物がハリーの存在を 物語の最後に現出した者の分身として見ていたのですから、 逆にその者はハリーの内部の投影としても解釈する事が可能です。 現実的な小説なら少年の内面で荒れ狂う闘いが、 残虐な人の形をとって少年の善良な部分と 血みどろの争いを繰り広げるとも読めるからです。 やはり14歳は危険な年齢なのでした。
既に完成しているというハリー・ポッターのシリーズが 一年ずつ間をおいて出版されているのには 読者である子供達がハリーと同じ年齢になっていないと 通して読ませる事が出来ないという事情もあったのでしょうね。 この分厚い一冊で『ハリー・ポッター 前編』の最終回といった趣きです。 『the Gobret of Fire』最終章のタイトルは「The Beginning」、 さあ次巻で15歳となり、共に力をあわせる仲間も増えた彼らの前に、 どれほど困難で壮絶な闘いが待っているのか?(ナルシア)
『HARRY POTTER and the Gobret of Fire』 / 出版社:Bloomsbury(日本洋書販売配給)
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管理者:お天気猫や
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