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デザイン・京極夏彦。 いや、それは余談として(笑)。
現代作家の、しかも日本のホラー小説は、 ほとんど読んだことがない。 もと少女小説界のスターだったという津原泰水も はじめてだった。 図書館で、なんとなく手に取ったのだ。 スタンプがけっこうたくさん押されているのが 面白さの証拠になるだろうと借りた。
実体を伴った、普通の人には見えない死者の群れが、 邪神の化身に導かれて東京に現れる。 絶対的な主人公はいないが、すべての人物に光が当たり、 犬たちも重要なポストにいる。
わたしはほんとうは、あの危険で残虐で救いのない 時間と空間から遠く隔たった安全なところにいるのでは なくて、ほんとうは、ほんとうは。
…ということを、考えまいとしていた自分に気づく。 そんな感覚をもって読み終えた。
その時間と空間はひとによって違うのだろうが、 少なくてもわたしのなかに、そうした記憶が 封じ込められたフィールドはあるのだと思う。 それはもちろん、この世界で経験したことではなくて、 証明のしようのないことではあるけれど。
それなのに、絶望ではない。そこにあるのは。 そこが津原の作風なのか、力量だと思う。
そしてまた。 犬は鏡である、と津原はいう。 そう、犬は鏡である。 それが、犬と子どもの大きな違いかもしれない。(マーズ)
『妖都』 著者:津原泰水 / 出版社:講談社
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管理者:お天気猫や
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