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一編一編が心に沁みる独立した小さな謎ときで、 最終話まで通して読むと 『きれいなガラス玉に糸を通して首飾りが出来上がるよう』と、 かって有栖川有栖氏が表現したように、 全体のストーリーがつながって見える 加納朋子さんお得意の手法の連作ミステリ集です。 惜しむらくは静かな語りが身上の加納さんの文章だと アクティブな展開のはずの最終話は 視点が細かく変わるために勢いが削がれてしまう。 読み物としての技術的な点がもっとこなれれば、 ガラスは更に鮮明に輝く事でしょう。
理不尽にも通り魔に若い命を奪われた少女、 彼女の友人、教師、親達の日々の生活の中に 時折起きる不可思議で不気味な謎。 それらのひとつひとつの意味するところを見抜くのは もの静かな保健室の神野先生。 女子高生は傲岸で愚かで陽気で 楽しそうで生気に満ちあふれてみえる。 けれど中身は空洞で不安定で酷く脆い事を 神野先生は知っているから、 そんな子たちはみんな保健室にやってくる。 大人も先生に相談しにやってくる。 そうしていくつかの事件を経て、 恵まれていると思われていた 死んだ少女の真の淋しさが、 周りの人々にも見えてくるのです。
そう、女子高生は周りがまだ見えない、 自分では十分大人のつもりだったけど 社会と自分とを結び付けて全体的に考えられるのは やはりもっとずっと後になってからの事だったと、 昔女子高生だった大人は今になって思います。 そしてそれは自分自身ではどう仕様もない事なのでした。 だから、とても危うい。(ナルシア)
『ガラスの麒麟』 著者:加納朋子 / 出版社:講談社文庫
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管理者:お天気猫や
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