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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2001年02月13日(火) --

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『ファッションデザイナー』その(2)

シィアルにすすめられて読んだこの本は、 ここ数十年のファッションの歴史書といってもいい。 タイトルからすると、才能がものをいう華やかなファッション界を 赤裸々に描いた…という印象だが、ちょっとちがう。 原題は『The End of Fashion』、ファッションの終焉。 『ウォールストリートジャーナル』でファッション部門を担当する 記者が、20ヶ月の執筆休暇をもらって、 業界での豊富な取材や資料、 周囲の協力によって重層的に書き上げた名著。

私のようにハイファッションと縁のない人間でも、 ブランドとマーケティング戦略の関係という 切り口はとても参考になった。 そのおかげで、今までロゴや広告しか知らなかった ブランドのデザイナーが人間的に距離を縮めて見えるようになった。 そのブランドが、たとえばアメリカで どういう位置付けにあるのかといったこと (どういう客層が彼らを支えているのか)が、 ストーリーとして入ったといえばわかりやすいだろうか。

正直にいえば、今まで、ラルフ・ローレンやアルマーニが どんな人物かなんてまったく知らなかった。 ダナ・キャランはこの写真のなかの誰か、といわれても 間違った人物をさしてしまっただろう。 ゾランにいたっては、名前すら知らなかった。 (マーケ的にいえば私は客層ではないから知らなくても当然か)

ライターとしての非凡さは、大物のインタビューが さりげなく随所に盛り込まれていることからもうかがえる。 雑誌の記事からの引用はお手のものとはいえ、いたって用意周到。 とにかく、にくらしいくらい、かゆいところに手が届く 「なるほど。」な構成である。 人脈とひらめき、そして大胆さと繊細さとユーモアがあれば、 他の誰もが描こうとして描けなかった世界を、 新鮮なペンでリアルに料理することができるのだ。 それも、フルコースで。(マーズ)

(1)

『ファッションデザイナー』 著者:テリー・エイギンス / 出版社:文春文庫

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