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「自選少女ホラー」集となっていますが、 ここに収録された短編に共通するのは「少女」だけではなく、 基本テーマもほとんど同じです。 か細く幼い肢体の奥に傲慢を潜ませる少女と、 倦み疲れた外見の底に炎をひらめかせる大人の女。 この二人は歪んだ時間軸の中で一心同体、 互いのドッペルゲンゲルと言える存在です。 それでいてどの話もそれぞれの趣向が全く異なり、 独自に完成された世界を形作っています。
近年のホラーブームの中で大勢の実力有る若い女性作家達が 出版界を賑わしエキサイティングな作品群で私達を楽しませて くれていますが、やはり戦時中に少女時代を送り非生産的な 幻想文学など相手にされない時代を生き抜いて作品を磨いて来た 大先輩の技にはまだまだみんな、及びませんよ。
インパクトを与える冒頭、造形的でありつつリアリティに満ちた 描写、合理的で冷たいサイコストーリーになるか、 悪夢の淵に沈む事になるか、覗き込んだ途端にとーんと背中を 突き飛ばされるラスト。
まさに、短編はこうありたいものです。 やっと怪奇幻想譚の時代が巡ってきたのですから、 ミナガワ先生、末永く書き続けてくださいね。(ナルシア)
『巫子』 監修:皆川博子 / 出版社:学研M文庫
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管理者:お天気猫や
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