小学生の頃、給食を食べる順番というのが決まっていた。 それは「ミルク→パン→おかず」の順番で、6年間通して変わらなかった。 ミルクと言っても、途中までは脱脂粉乳で、牛乳が出るようになったのは高学年になってからだ。 だが、それも毎回出ていたわけではない。 これまでの記憶では、ある時期を境に脱脂粉乳が牛乳に変わったと思っていたが、どうもそれは記憶違いだったようだ。
6年の頃の記憶に『しんた流』なる食べ方があった。 ぼくはいつもおしゃべりばかりしていたので、食べるのが遅かった。 中でもパンを食べるのに時間がかかっていた。 それを解消するために、パンにミルクに浸して食べていたのだ。 今では珍しくない食べ方であるが、当時は「汚い」だの「気持ち悪い」だの「行儀が悪い」だの言われていたものだ。
その『しんた流』をやるにはミルクは食器に入っていなければならなかった。 当時の給食で出ていた牛乳はオーソドックなビン入りではなく、現在ほとんど見かけないテトラパック入りだった。 テトラパック入りの牛乳は、小さな穴にストローを突っ込んで飲むので、当然『しんた流』は出来ない。 ということは、6年の頃にも食器入りのミルク、つまり脱脂粉乳が出ていたということだ。
『しんた流』食べ方の利点は、給食を早く食べられることだけではなかった。 脱脂粉乳は味がまずいだけではなく、飲み始めに口にまとわりつく膜と、飲んだあとに口の中に残る粉が気持ち悪かった。 そういうものを、そのまま飲むこと自体おかしい。 『しんた流』を採用することにより、脱脂粉乳のまずさはパンに浸透することによりミルクパンに変わり、膜や粉はそのままパンの具になった。 つまり『しんた流』には、そういう脱脂粉乳のまずさや気持ち悪さを解消してくれるという利点もあったのだ。
ただ、先にも書いたが、テトラパックでは『しんた流』が使えない。 そのため、テトラの日はいつも食べるのが遅くなっていた。
ところで、おかずはだいたい野菜や肉が中心だった。 だが、時々毛色の違ったものが「おかず」として登場することがあった。 『みつ豆』『フルーツポンチ』『ぜんざい』などがそうであるが、いったいこれらのどこが「おかず」と言うのだろうか。 どう考えてもデザートである。
まあ、おいしかったから文句は言わなかった。 だが、これらが「おかず」というわけだから、その日の給食の組み合わせは無茶苦茶である。 冒頭に書いた給食の順番どおりに食べるとなると、例えば「ミルク→パン→みつ豆」といった順番に食べていかなければならないことになる。 この順番がリピートするわけだから、「みつ豆」のあとには「ミルク」がくる。 つまり「みつ豆」と「ミルク=脱脂粉乳」が口の中で混ざりあうことになるのだ。 もちろん「フルーツポンチ」と「ミルク」、「ぜんざい」と「ミルク」の時もある。 果たして今、こういう組み合わせで食べることが出来るだろうか?
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