このところ、ぼくの周りでいろいろな噂が流れている。 詳しくは書かないが、もしかしたら、ぼくの職場が失われるかもしれないのだ。 そうなると、ぼくはリストラに遭ってしまう。 もしくは、リストラという手を取らずに、やめる方向にぼくを追いやるかもしれない。 なぜそうなるかというと、ぼくが30年近く家電一筋でやってきたため、他の部署で潰しがきかないからだ。 そのことで、ずっと悩んでいた。
リストラを言い渡される前に、こちらから辞めてやろうかとも思った。 しかし、それをやるのためには、次の就職先が決めないとならない。 今の収入を確保できないと、生活が出来ないからだ。 そこで、取引先の人に、その辺の情報を仕入れることにした。 しかし、あまりいい話はなかった。 やはり、どこも人を雇うほどの体力を持ち合わせてないようだ。 仮にそういう企業があったとしても、今年48歳の男を、今の収入のまま採用してくれることは、まずないだろう。 「さて、どうしたものか」と、ぼくは途方に暮れた。
そういう折、例の占いに出会ったのだ。 「将来は約束されている」 そう思うと、目の前が開けたような気がした。 ところが、よくよく聞いてみると、運は開けるのは3年後だというではないか。 こちらは切羽詰まっているのに、3年も待つことなんて出来ない。
「この3年を乗り切る方法はないか?」 その占いを聞いてからは、そのことがぼくの新たな悩みとなった。 それ以降、仕事上でもあまりいいことがなかったし、体調もあまりよくない。 「何とかしなければ」という思いは、日に日に募ってくる。 とはいえ、ただ考えているばかりで、じっとしていても埒はあかない。 そこで心機一転しようと、今日厄払いをすることにした。
行った先は、宗像大社だった。 ぼくは迷った時、いつもこの神社に行っている。 そこで参拝をすませたあと、おみくじを引いた。 恐る恐るおみくじを開いてみると、“大吉”という文字が浮かんで見えた。 「えっ、大吉?そんなはずはないだろう」と思ったぼくは、その文面をよく読んでみた。
はじめは冬の枯れ木の葉おちて、花もなく、淋しく、この末如何なろうかと気遣うも、そのうちに春となって花さくごとく、末よき運となり、何事も慎め退屈せず時を待てば必ずよし。 となっている。 さすが神様である。 ぼくの悩みなんか、お見通しである。
とはいえ、いったい冬の間、ぼくはどうやって過ごしたらいいのだろう? 『退屈せず時を待て』とは、どういうことなんだろうか? それに、『末よき運』とは、いったいどのくらいのスパンの『末』なんだろう? 3年後だろうか? それとも、もっと早い時期だろうか? また悩みが増えそうである。
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