今日から本格的な歯の治療が始まった。 というより、抜かれた。 それも親知らずではなく、その手前の歯を。 ぼくはてっきり親知らずのほうが悪いと思っていた。 20年以上も穴が空いていたのに、治療もせずに放っておいたからだ。 ところが、悪いのは手前の歯だった。 手前の歯は、高校時代に治療していたのだ。 その時銀をかぶせていたのだが、ある時それが外れた。 その歯を治療に行けば、確実にその後ろの親知らずを抜かれると思い、そのまま放っておいたが、それでも3年くらいしかたっていない。 どうして治療していた歯の方が、それも17年以上も先輩の虫歯よりも悪くなったのだろうか。
そうだった。 今日抜いた歯は、例のデス歯科医院(H16年3月4,5日の日記参照)で治療したものだった。 高校時代のことだから、もちろん同級生のデス君が治療したのではない。 治療したのは、デス父のほうである。 人が「痛い」と言っているのに、「痛いはずはない」と言ってかまわずに針を差し込んだ、あのデス父である。 そういえば、あの時からずっと若干の痛みはあったのだ。 ここに来てとうとうボロが出た、ということである。
さて、今日は朝10時前に歯医者に出かけた。 歯医者に着くと、待つこともなく治療室に入れられた。 席につくと看護婦が、「痛みましたか?」と聞いてきた。 「はい、痛みました。今も痛いです」と、ぼくは答えた。 すると看護婦は、先生の所に行って、「しんたさん、痛みがあるそうです」と言った。 先生はその時、他の患者さんの治療をしていたのだが、それを聞くと治療している手を止めて、「そうですか。じゃあ、抜歯しないとなあ」と言った。
しばらくして先生がやってきた。 「こんにちは。あのあと痛んだそうですね」 「はい」 「今日は少し削ってみて、それでだめなようなら抜きます」 さっそく治療が始まった。 10分ほど削ったあとに、先生は言った。 「やっぱり抜かないとだめなようですね。そのかわり後ろの歯は残しますから」 「そうですか」 「それでは、麻酔を打ちますんで」 と言うと、先生はぼくの歯茎に何本かの麻酔を打った。
それから5分ほどたって、先生は「じゃあ、始めましょうか」と言った。 いよいよである。 先生は歯を少しずつ削りながら、歯と歯茎の間にへらのようなものを差し込んだ。 その最中、先生は何度も「痛いですか?」と聞いてきた。 麻酔を打っているので、もちろん歯は痛くない。 が、別の場所が痛くてならない。 その場所とは、唇である。 先生が、無理矢理ぼくの口を開こうとするのだ。 別にぼくが怯えて口を開けてないのではない。 自分では精一杯開けているつもりなのだ。 だが、その構造上、それ以上開かないのだ。 それでも先生は容赦なく力を加えてくる。 そのせいで、口が裂けるんじゃないかと思ったほどだった。
歯を抜き出してから40分ほどで歯は抜けた。 歯を抜かれた経験があまりないぼくでも、歯がとれる時はわかった。 密着している歯と歯茎の間に、空気が入っていくのだ。 ぼくが『あ、とれたな』と思っていると、先生は「はい、とれましたよ」と言った。 先生は、そのあとすぐにぼくに脱脂綿をくわえさせ、 「しばらく、それを噛んでおいて下さい」と言った。 徐々に麻酔が覚めきて、血の温かみがわかるようになった。 しばらくして、看護婦が脱脂綿を取りかえに来た。 そして新しい脱脂綿をぼくにくわえさせると、 「今日はこれで終わりです」と言った。
そのあと、ぼくは受付で、化膿止めと痛み止めの薬をもらった。 「化膿止めは8時間置きに飲んで下さい」 「食後ですか?」 「はい」 「わかりました」 「で、もう一つの痛み止めの方は痛い時に飲んで下さいね」 当たり前である。 痛くもないのに飲むはずがない。
その後ぼくは、「ところで、今日忘年会なんですけど、飲んで大丈夫ですかねえ?」と聞いてみた。 「うーん、あまり飲み過ぎると薬が効かないと言いますからねえ…、うーん」 話が続くのかと思ったら、それ以上受付嬢は何も言わなかった。 ぼくとしては、だから、どうしたらいいのかを聞きたかったのに。 綿さえ噛んでなかったら、しつこく聞いていただろうが、それ以上聞く気力もなかった。
さて、家に帰ったぼくは、1時間近く、その脱脂綿を噛んだままだった。 もういいだろうと思って、トイレにそれを捨てに行った。 どす黒い血が便器の中を染めた。 そして洗面所に行ってうがいをした。 「これで、もういいだろう」と思い、部屋に戻ってタバコを吸おうとした。 ところが、まだ生ぬるい血が出ているのだ。 それから1時間近くたつが、いまだに血は止まっていない。 今、午後2時である。 朝から何も食べてないので何か食べたいのだが、さて、どうしたものだろうか?
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